研究課題/領域番号 |
24500197
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
井宮 淳 千葉大学, 総合メディア基盤センター, 教授 (10176505)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 計算解剖学 / 形状解析 |
研究概要 |
医用診断は最終的には医師によって行われる。そこで、医用データ処理において用意できるものは、医師が診断に利用することができる数値化された特徴量を用意することである。人体解剖図には夫々の臓器が典型的な形状で描かれている。これは、個々の臓器に関する多数の解剖例から、典型的な形状を医師や医学画家が構成してきた結果である。本研究では、MRI画像やX線透視画像から得られる非侵襲的解剖学見地に基づいて、電子的に臓器の標準を構築し、構築された標準データに基づく診断支援を目的とする。そのために、臓器の位置情報に元づいて、単体の標準臓器を空間に再配置し、標準臓器配置モデルを構築する必要がある。 形状のトポロジーを保存する情報圧縮表現として骨格化がある。平面上の骨格抽出方として、(1)非線形拡散方程式に基づくもの、(2)計算幾何学に基づくものの2種類がある。これらの手法を球面上の形状に対して適用する場合、それぞれ、(1)曲がった空間における波面伝播、(2)曲がった空間における組合せ幾何学が必要となる。(1)波伝播、(2)計算幾何学の分野においてその一般論が研究されている。これらの手法を、曲面上の確率構造を持つ点分布に拡張することで、高速高精度な特徴量抽出手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
集団から計測された多数の臓器画像から、個人差による変化、年齢による経年変動を統計的変動として、統計的に堅固な腹部規格化臓器モデルを診断のためのモデルとすることを提案するとともに、効率が良く、しかも例外値に対しても堅固な高次元データの照合法と検索法を構築する。そのために、 1.腹部と胸部とを対象とした多臓器データの単一臓器データへの分離・分割 2.平均臓器の定義と計算法 3.時系列学習による平均臓器の時間的変化追跡法の構築 について、統計的弾性変形理論の立場から臓器形状の数理モデルの構築について成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
離散データは標本化されているために解像度以下のデータ欠損としての穴や突起が計測されない。これらの不完全データを位相幾何学的に正しい形状に修正をすることは、均質で間違いの無い3次元画像を生成する上で重要な技術である。そこで、離散データから計算される物体の離散多面体表現を基に、情報統合によって生じる幾何学的欠損や幾何学的余剰を自動的に判定し修正する技術を開発する。欠損や余剰を自動的に判定する機能として、幾何学的に正しい局所形状の組合せ構造を解明し、その組合せとして曲面の記述や生成を整数値の計算だけで高精度に実現する手法を構築する。そこで、24 年度におこなった基礎的研究を受けて、以下の2点に付いて研究を進める。 1.形状を電子的に変形する技術はモーフィングと呼ばれ、変形後の形状に元の形状曲面上のパターンを貼り付ける技術はモザイクと呼ばれる。これら2つの技術は、現在では商業映画の編集などに利用されており、芸術支援としては完成された技術である。しかし、確率構造を持ち、複数の分布に分かれたデータである多臓器を規格化臓器に変換するために、新たに、臓器表面の局所的な動きを記述するテンソル量に対するモーフィングとモザイク技術を開発する。 2.臓器表面の局所構造を、MRI再構成画像列から高精度計算する手法を開発する必要がある。画像列の中の局所運動を抽出する手法として画像理解の中で開発されたオプティカルフローの手法はそのままでは、3次元非剛体の再構成画像列に適用することはできない。そこで、新たに、非剛体拘束条件を考慮した、非接触3次元局所構造計算法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
個人差による形状の変動が大きい脳以外の臓器に適用するためには個々のデータならびにデータ集合の確率構造を保存する変換を取り扱う必要がある。また、臓器の3次元濃淡画像を標準空間に変形するためには、構造保存曲率流を数値計算する必要がある。そこで、以下の3点を中心に研究を進める。 1.胸部画像や腹部画像に存在する多種類の臓器を分類するために、位置と濃淡値とを対としてデータの分類法をパターン識別理論に元づいて構築する。 2.多臓器構造の中で単一臓器を分類するためには、曲がった空間の中の確率変動を記述し分類する必要がある。そこで、画像理解において開発された隠れマルコフ過程とベイズ推定の手法によって臓器の配置のように構造を持ったデータの微小変動を抽出する手法を開発する。 3.効率的な数値計算のために、CGにおいて開発されてきたモーフィング手法を参考に、局所変動構造を保存する変形の数値計算に適した定式化の必要がある。 そこで、機械学習の手法によって、変形のパラメータを学習する手法を開発する必要がある。大量の3次元医用画像データから支配的なパラメータをデータマイニングの手法で抽出し、その結果から学習を行うシステムを構築する。25年度は、初年度の研究成果を海外に於いて発表・公知するとともに、関係研究の海外動向調査を広く実施し、初年度の研究成果と統合を行う。さらに、初年度に開発した計算コードを専用計算機に実装し、高速化を実現する。
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