研究課題/領域番号 |
24500200
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮島 千代美 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (90335092)
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研究分担者 |
北岡 教英 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (10333501)
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キーワード | 運転行動 / 運転データ収集 / 車載ネットワーク / スマートフォン / 行動解析 |
研究概要 |
構築した運転信号記録装置を用いて引き続き運転データの収録を行うとともに,ペダル操作信号の互換性について検討した.これまで我々が実験車両の運転席のアクセルペダルにひずみゲージを装着して収録していたペダル操作信号は,ペダル踏力の信号であるのに対し,車載ネットワークのCANから取得できるペダル操作信号は,ペダルの操作量を表わす信号である.そこで,ペダル踏力とペダル操作量との信号の性質の違いと関係について分析した.同じ車両に本運転信号記録装置とひずみゲージを搭載し,ペダルを踏み込んで離す反復動作におけるペダル踏力とペダル操作量の信号を同時記録した.収録した信号を分析した結果,踏力が変化しても操作量が変化しないペダルの遊びが存在し,これらの信号の関係は,ねじりコイルばねのヒステリシス特性によって説明できることを明らかにした.更に,複数の車種で収集した複数のドライバによる運転データを用いて,ドライバの運転行動の個人性と,車種の違いによる運転行動の変化について調査した.信号波形や信号の分布を比較することで,ドライバの個人性や車種による違いを示すとともに,ケプストラム分析によって個人性を抽出する手法について検討した.ガウス混合モデルを用いたドライバ識別実験において,モデル学習に用いた車種とは異なる車種の運転データをテストに用いた場合,識別率が低下した.そこで,ペダル操作量に対して,ヒストグラム平坦化に基づく車種による違いの正規化を行った.正規化により識別率に改善が見られ,車種の違いの影響をある程度吸収することができたが,同一車種による識別率には及ばないことから,車両ダイナミクスを踏まえた正規化が必要であることが分かった.また,ドライバ識別実験において,ペダル踏力とペダル操作量を比較した結果,ペダル踏力を用いた場合の方が識別率が高く,踏力信号により多くの個人性が含まれることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,ひずみゲージで記録したペダル踏力と車載ネットワークから得られるペダル操作量の信号との関係について明らかにするとともに,複数車種で収録した運転行動信号から個人性を抽出し,ドライバ識別実験により評価を行ったことから,研究はおおむね計画通り順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で構築した運転信号記録装置を用いて引き続き運転データの収集を行い,被験者数を増やすとともに,新たな車種の車載ネットワークの解析を行うことで,収録可能な車種数を増やす予定である.また,収録した運転データを用いて,車載ネットワークとスマートフォン内蔵センサから得られる信号のみで,ドライバの運転の危険性を,これまで用いていた車載センサやドライブレコーダと同様に評価できるかについて検討する.さらに,同一ドライバが異なる車種で同一コースを走行して記録した運転データを用いて,ドライバの運転行動の危険性を評価し,同一ドライバに対する運転行動の危険性の評価結果が,車種によってどのように変化するか,あるいは車種によらず共通の傾向がみられるかについて調査する.また,これまで,ドライバの運転行動の危険性の評価は,アクセルペダル操作・ブレーキペダル操作・ハンドル操作等,それぞれの操作について個別に行っていたが,これらの評価を統合することで,総合的にドライバの危険性を予測する手法についても検討する.ペダル操作やハンドル操作等,それぞれの運転操作行動について個別に得られた危険性の特徴量を,重回帰や主成分回帰によって統合することで,専門家によるドライバの危険性の評価値を予測する.また,得られた予測結果の精度について,順位相関や二乗誤差によって評価する.これらの研究成果について,国内外の学会や論文等において積極的に発表する.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は解像度を抑えて映像データの収集を行ったため,収録データ保存用のサーバの購入等を見送ったが,来年度は高解像度の前方映像や顔映像データを含む運転データを記録するため,来年度予算で記録装置を増強する予定である. 次年度の研究費は,被験者実験やデータ処理費用,運転記録収録装置の改修や,収録データ保存・処理用のサーバ購入費用等に利用するとともに,国内外の学会への出張旅費等,研究発表のための費用として利用する予定である.
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