研究課題/領域番号 |
24500210
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
公文 誠 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (70332864)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 音源定位 / 能動耳介 / ロボット聴覚 / 確率的状態推定 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
研究概要 |
本研究は可動式の耳介(耳たぶ)とロボット頭部の協調動作について, 聴覚機能の高性能化の観点から解析し, その応用として確率的音源定位手法を考案することを目的としており, 頭部動作と耳介動作の協調によるロボット聴覚の機序と協調動作,不確かさを考慮した確率的聴覚機能モデルについて検討することを目標に掲げている.24年度は頭部運動および観測に由来する不確かさの下で,まずは2つの耳介の協調動作について音源定位の観点からロボット聴覚に関する研究を行った.また確率的聴覚機能の応用として,視覚では直接に確認できない位置にある対象物の位置を音源情報を手がかりに推定する方法を考案した. 1. 頭部運動の下での耳介による音源定位において,頭部運動が観測器の設置揺らぎとして扱えることから音源定位の情報が不確かになる事実を用い,音源定位の情報を確率的に表現する方法を導入した.この結果頭部動作の揺らぎによる影響をBayes理論に基づいて理論的に扱うことが可能となり,耳介の配位情報と統合することで音源定位性能が改善することを明らかにした. 2. 音源定位情報を確率的に表現したため,確率的動作計画法を検討する必要が生じた.再帰的なBayes推定に基づく音源定位手法を考案し,この結果に基づいて定位精度の向上を期待する動作計画法を開発し,まず耳介の協調動作として検証したところ,動作により音源定位性能が改善することが確認された. 3. 確率的音源定位の考え方を敷衍して,壁の背後にある対象物などの発する音情報を利用して音源の位置を推定する方法を考案した.実際の実験を通じて,一定の条件の下で良好な結果を得られることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主眼であるロボットの身体(耳介)動作を利用した音源定位については,確率的音源定位手法を導入し性能改善を結果を得ているため,目的に沿って進展を見ていると言える.また,この手法の拡張として,視野外の音源定位についても実験的に効果を確認しており,当初の計画に比べて進捗の見られる成果が得られている. 頭部動作の影響についても,不確かさと捉えて音源定位性能改善の手がかりとした点で,ロボットの全身運動下におけるロボット聴覚の展開の一部を明らかにしており進展があったと言える. 頭部と耳介の協調動作についても原理的には本年度の手法をそのまま適用可能であるが,自由度の増加により実時間での動作計画が果たせておらず継続的な研究が必要である.確率的音源定位の理論的基礎で進展を見たため,動作のタスク配分は実際の装置による検証を中心とすることとし頭部動作の模擬装置の開発を優先し,実際の実験等の検証は25年度に行うこととしている.
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今後の研究の推進方策 |
24年度に確率的音源定位手法とこれに基づいた耳介の動作生成法を提案した.25年度ではこの手法をより自由度の大きな頭部・耳介協調系へと拡張する.準備状況としては24年度に頭部動作の模擬装置を開発したので,この上に能動耳介装置を組み合わせることが可能である.課題として,対象の自由度が大きくなるため計算時間の短縮を目指した効率改善,冗長タスクでの動作配分があり,これらを確率的音源定位のコンテキストにおいて統合することを考える. また,確率的音源定位の手法は,環境情報を確率的に表現する方法であり,例えば視覚センサの情報も同様の表現が可能で,複数の感覚をシームレスに統合することが期待できる.そこで聴覚を中心としたマルチモーダルな情報統合手法,動作生成法といった拡張を目指す.このため,カメラやレーザレンジファインダ等の聴覚以外のモダリティを持つセンサを導入する.プラットフォームとなるロボットシステムは,十分なセンサを搭載できるものを必要に応じて購入する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
頭部と耳介の協調動作を実現するため,24年度に開発した頭部動作模擬装置の改造するために機械部品・電子部品等を予定しており,その作業のための謝金を計画している.また自由度の増加に伴い計算量が増えるため,演算性能の高い計算機を購入する.あわせて,マルチモーダル情報に基づく動作計画法のためのセンサ購入およびプラットフォームの購入費用を予定している. 24年度から得られた成果の発表等に努め,このための投稿費用および旅費に用いる. 24年度からの繰越分については24年度の成果発表(あるいはその一部)に使用する.
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