最終年度の研究成果は主に1.自宅環境における睡眠時の無呼吸低呼吸指数(以後,AHIと明記)の推定精度の評価および改善,2.学会発表による成果の公表,3.研究者向けアプリの改良の3点である。1.前年度まで主に睡眠時無呼吸症候群(以後,SASと明記)患者の判定に主眼をおき,SASの入院患者のデータからAHIの予測モデルと推定精度の評価を行った。しかし実際に利用する際には,睡眠環境は病院ではなく自宅が主であり,またAHIの低い健常者が多く含まれる事が予想される。従って自宅での睡眠環境において低いAHIをもつ人に対してもAHIを高精度に推定できる事が重要である。最終年度では,自宅環境においてAHIが低い被験者のデータを測定し推定精度を評価した。具体的には,自宅での睡眠中に,血中酸素濃度,気流,心拍などの情報からAHIを算出できる睡眠時無呼吸モニター装置と呼吸音録音用のICレコーダを用いてデータを収録し,簡易モニター装置によるAHIを真値,呼吸音のみから本モデルで推定したAHIを推定値として,その誤差を評価した。その結果,従来と同じパラメータ設定で推定を行うと,自宅環境では20%以上の大きな予測誤差が生じる事がわかった。この原因を追究した結果,精度改善には周波数帯域の変更が有効である事がわかった。具体的には従来の低音域(100-400Hz)から高音域(5k-10kHz)に着目帯域を変更した。閾値等のパラメータも再調整した結果,病院環境でのAHI推定精度をほとんど低下させることなく,自宅環境でのAHI推定誤差を10%以下まで低減する事ができた。2.査読付きのワークショップと音響学会での発表を通して成果を公表した。3.昨年度開発したアプリを改良し,プログラムの変更せずにパラメータを変更する機能や各段階での中間的処理結果を出力する機能を加え,より広い研究者に向けて有用なアプリとなった。
|