研究実績の概要 |
平成26年度は、まず画像処理の基礎である木構造表現による大規模画像検索に関する研究において、複数の空間充填曲線の導入を検討し、これまでのヒルベルト走査型Bag-Of- Feature (HBOF)を拡張した適応的空間充填走査型BOF(ABOF)を提案した。これは、様々な走査法を利用して空間情報をいかに効果的に導入するかを検討したものである。複数の空間充填曲線を走査法として用いることにより、画像内の対象物などの実空間における近傍概念の保存が実現できる。個々の画像に対して複数の走査法の中からどの走査法が最も適しているかを選択し、最も効率のよい走査法を適用した結果、画像検索効率を向上させることができた。走査選択法として、特徴点数に基づく指標を定義し、記憶容量の削減および計算量の削減の観点からどの程度の効果があるかを検討した。大規模画像データベース(Caltech256など)を用いた画像検索実験の結果、提案手法であるAHBOFがこれまで提案してきたHBOFよりmAPにおいて約3~5%改善できることがわかった。 次に、患者の高齢化進展から、病院や薬局では薬剤の裸錠監査に対するニーズが急増しているが、患者の持ち込む裸錠が何であるかを特定する裸錠認識アルゴリズムを検討した。特に、6,500種に及ぶ裸錠の種類を正確に認識するためには、重要な情報として裸錠に刻まれた刻印、印字などがある。このため刻印等の情報を高精度で検出する回転不変の新たな裸錠特徴抽出法を考案した。これは多段階サブサンプリング法により刻印情報を効率よく記述する特徴記述子である。また、新たな特徴記述子を使ったパターンマッチング法を開発した。その結果、6,500種類の裸錠認識に関しては、リアルタイム処理が可能で、かつ認識率95%以上が実現できることを確認した。
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