研究課題/領域番号 |
24500219
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
田中 博 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (00434415)
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研究分担者 |
五百蔵 重典 神奈川工科大学, 情報学部, 教授 (20318992)
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キーワード | センサ融合・統合 / センサーネットワーク / ユビキタスコンピューティング / 屋内測位 / 慣性センサー / 超音波センサー / スマートフォン / 非可聴音 |
研究概要 |
経済的かつ高精度な広域屋内測位基盤の確立をめざし、スマートフォンに実装されている慣性センサによる慣性測位と超音波を融合させた測位技術と広域への展開が容易な測位プラットフォームの構成法とその検証を進めている。H25年度に得られた成果を総括する。 1. 広域測位に向けた超音波測位:安価な複数のマイコンを分散配置する構成での超音波測位システムを開発し、学内廊下天井に18mの領域にわたって設置した。そして、実際に測位実験を行い、数cm程度の誤差範囲の精度を確保していることを確認した。応用の一例として、電動車いすの高精度な屋内自動走行制御に利用することを提案、適用し、走行実験を開始した。 2. スマートフォンの非可聴音の利用の可能性の検討:スマートフォンの内蔵スピーカを用いることができれば、すでに広く普及している機器のみで屋内測位が可能となる。H25年度は、スマートフォンからの非可聴音の受信回路を試作評価し、環境ノイズの影響は受けるものの、測位は可能である見通しを得た。その結果をH26年度の研究開発に継続する。 3. 屋内測位基盤プラットフォーム:取得した測位結果は、地図情報とリンクすることによって、より有用、実用的なものとなる。地図情報上に測位結果を表示するシステムを構築、評価した。技術蓄積は図れたものの、遅延時間が大きく実利用の観点から不十分なことを明らかにし、H26年度に向けた課題として抽出した、 4. 慣性センサを用いた屋内測位:従来は、手に所持、ポケットに格納、腰、腕に装着の条件での慣性センサによる測位を検討してきた。Googleグラスの出現や国内メーカ製の類似製品の発売計画を踏まえ、メガネに慣性センサが内蔵された場合を想定した測位に関する検討に着手した。また、内蔵気圧センサと参照センサとの差分に基づく、新たな在階推定方法を考案、権利出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超音波を用いた屋内測位システムの原理や構成は、汎用的なものである。スマートフォンの著しい普及があり、スマートフォンのスピーカからの非可聴音を用いた測位の可能性について、新たなテーマとして加え検討を着手した。そのため、慣性センサを用いた測位の進捗が若干遅れることになった。しかし、スマートフォンからの非可聴音送信による測位の実現の見通しを得たことは、その実現の際のインパクトを考えるに、計画以上の成果だったと考えている。 また、新たに考案した在階推定方法は、屋内測位の一つの大きな技術要素であり、この点を明らかにしたことも予定以上の成果だったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
スマートフォンからの非可聴音を用いることによって、測位が可能となれば、専用の超音波送信機を具備する必要がなくなる。これは、一般のユーザを考慮した屋内測位サービスを考慮した場合、大きな意味を持つと考えられる。また、Googleグラスの話題が大きくとりあげられているが、日本製の類似製品の発売も予定されている。これらの周辺状況を踏まえ、以下の観点を重視した研究を推進し、新規性、先導性を確保する予定である。 (1)スマートフォンの非可聴音による屋内測位の実現と評価:環境ノイズの影響を抑制するフィルタの設計を行い、その実装により、測位精度の向上を図る。超音波センサを用いた場合との測位精度などの比較を行い、実現性、有用性の評価の観点から検討を推進する。 (2)メガネ型ディスプレイの利用:”歩きスマホ”は大きな問題になっている。これを解決する一つの解が、メガネ型ディスプレイの利用である。本装置を用いた慣性測位手法を検討するとともに、現状の開発プラットフォームにおける問題点(処理遅延等)を解決し、本ディスプレイに屋内測位情報、ナビ情報を提示する機能を実現する。 (3)外部との連携の推進:デッドレコニングと呼ばれる慣性センサを用いた屋内測位に関する研究は、手法は異なるものの多くの研究機関で行われている。また、屋内測位としても超音波以外に無線LANを用いたものなど、検討が活発である。関連研究者、研究機関と連携して、技術の普及や実用化に向けた取り組みに積極的に寄与、関与していく。
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