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2013 年度 実施状況報告書

無意識的な身体運動制御における両眼視差の影響

研究課題

研究課題/領域番号 24500236
研究機関東京工業大学

研究代表者

金子 寛彦  東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (60323804)

研究分担者 和田 佳郎  奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (80240810)
キーワード垂直視差 / 頭部運動 / 眼球運動 / 行動 / 空間知覚 / 視方向 / 奥行き運動
研究概要

垂直両眼視差は,理論的に視方向の手掛かりとして利用できる.しかし,これまで報告された研究では,垂直視差は方向の判断にほとんど影響を与えないことが示されている.一方,知覚と行動における視覚情報処理の違いが近年明らかになってきており、両眼視差においても知覚と行動での処理の違いがある可能性がある.そこで研究では,垂直視差が,その方向情報を基にした行動に与える影響について明らかにすることを目的としている.
平成25年度においては,上記目標を達成するために,まず,視覚情報を用いた行動である頭部ポインティング応答に対して,垂直・水平視差が与える影響を調べた.頭部ポインティング課題では,被験者は頭部をターゲットの方向へ向け,そのときの頭部方向を計測した.その際に背景の垂直・水平視差を頭部位置に応じて変化させた.その結果,ポインティングターゲットの背景の垂直・水平視差が頭部方向に影響を与えることを示唆する結果が得られた.
次に,水平視差による奥行き運動対象に様々は垂直視差を付加し,その到達位置の手技応答を調べる実験により,垂直視差の視覚行動に与える影響を見いだした.また,広い視野中の奥行き運動刺激が歩行運動速度に与える影響に関しても調査した.
さらに,平成24年度から開始した,垂直視差の周期的変化が,部方向の制御に与える影響を調べる実験に関して,条件を増やしてさらに実験を行い,解析方法にも検討を加えた.その結果,その結果,垂直両眼視差の周期的な変化に対して,それと同周期の頭部回転運動が確かめられ,その役割についても検討を加えた.
そして,頭部運動と同時に眼球運動を測定することにより,垂直視差と水平眼球運動との関連を明らかにする研究を開始した.今後は,その実験を中心に進めるとともに,眼球・頭部・身体運動を総合的に考え,それらを制御する上での垂直視差の役割を明らかにしてゆきたいと考えている.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度における第一の当初目標は「垂直視差が動的に変化する刺激を観察した際の頭部,身体の個別の反応を計測する」であったが,この件に対しては24年度から実験を始めており,25年度も引き続いて実験を行い多くのデータを取ったため,予想以上の達成度であったと言え,当初目標の120%程度と考えている.
平成25年度の第二の目標として「眼球・頭部・身体が全て自由に動く状態でそれらを同時に測定し,それぞれの運動およびそれらの運動の相互作用に与える垂直視差の影響を検討する」という課題を挙げていたが,この課題に関しては,予備実験の段階であり,現在,頭部と眼球の同時計測を行う実験の準備を進めている.ただし,その予備実験的な位置づけとして,垂直視差の時間変化を持つ刺激に対し,手技操作によってその視方向をリアルタイムで応答する実験を詳細に行った.この実験は,眼球運動の指標になると考えられる.結果として,この目標に対しては,当初目標の80%程度と言える.
上記のように,前者の目標に関しては予定を超えた成果が得られたが,後者の目標についてはやや予定に達しなかったと言える.しかし,後者の目標に関しては,当初予定していなかったが必要と考えられた予備的実験を進めたこともあり,達成度は前述のとおりである.全体としてみると,おおむね順調に進展していると考えている.

今後の研究の推進方策

平成26年度の前半においては,まず25年度に行った第一の課題(「頭部,身体を固定した条件で,垂直視差が動的に変化する刺激を観察したときの眼球運動の計測」)のための実験成果を原著論文という形でまとめる予定である.次に,25年度に着手した第二の課題(「眼球・頭部・身体が全て自由に動く状態での同時測定に基づいた,それぞれの運動およびそれらの運動の相互作用に与える垂直視差の影響の検討」)を進める.ただし,予備実験を通して,身体の運動を自由にするという条件が予想以上に困難であることがわかり,限られた研究期間で有意義なデータを取得することを優先し,眼球と頭部の運動に限って実験を進めることとしたい.
平成26年度の後半においては,それまでに取得したデータに基づいて,今年度に当初予定していた課題(「垂直視差と眼球・頭部・身体運動の関係を定量的に示すモデルの構築」)を行う.
そして,そのモデルとこれまでに得られたデータに基づき,当初予定していた第二の課題(「立体画像・映像の安全性および臨場感向上のための提案」)を行う.ここでは,他の研究から得られている垂直および水平視差と奥行き知覚との関係に関する知見も十分に加味して提案を行う.その中で特に目指したいのは,これまでの多くの研究で提案されているような,観察者が静止した状態で立体映像を観察する場合に関するものではなく,観察者が能動的に動いて立体映像を観察するVRシステムや,受動的に動く中で立体映像を観察するモーションライドのようなシステムにおける,臨場感,安全性に言及することである.その際には,研究分担者とよく議論し,生理学的,医学的および心理学的知見をよく考慮して検討する.

次年度の研究費の使用計画

次年度に使用する予定となる研究費が生じることとなったが,その主な理由は,成果発表のための出張費が予定より少なかったことと,予定していた成果投稿料の支出がなかったことである.またそれに伴う研究補助の謝金の支出もなかった.これは,成果発表の準備がやや遅れ,平成25年度中に成果発表をする機会が少なく,当初予算を全て使用する必要がなかったためである.
平成26年度7月の国際会議で成果発表の予定があり,また現在審査中の投稿論文もあるため,今年度中旬までには,平成25年度からの繰り越し分に相当する,予定した費目による支出が見込まれる.
平成26年度に当初予定していた研究費に関しては,予定した通りに,解析および取りまとめ用PC,ソフトウェア,記憶媒体などの周辺機器,成果発表のための旅費や経費,謝金などに使用する予定である.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Infants’ sensitivity to vertical disparity for depth perception2013

    • 著者名/発表者名
      Tsuruhara A, Kaneko K, Kanazawa S, Otsuka Y, Shirai N, Yamaguchi M K
    • 雑誌名

      Optical Review

      巻: 20 ページ: 227-281

    • 査読あり
  • [学会発表] 両眼視差分布の存在による頭部ポインティング方向の変化2014

    • 著者名/発表者名
      前川亮, 金子寛彦
    • 学会等名
      視覚学会2014年冬季大会
    • 発表場所
      工学院大学(東京)
    • 年月日
      20140122-20140124
  • [学会発表] 日常環境への適応により生じる傾き知覚の上下非対称性2014

    • 著者名/発表者名
      稲上 誠, 金子寛彦
    • 学会等名
      視覚学会2014年冬季大会
    • 発表場所
      工学院大学(東京)
    • 年月日
      20140122-20140124
  • [学会発表] 頭部傾斜感覚を指標とした新しい平衡機能検査システムの確立2013

    • 著者名/発表者名
      和田佳郎、山中敏彰、清水直樹、細井裕司、倉田純一
    • 学会等名
      第72回日本めまい平衡医学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20131113-20131115
  • [学会発表] 物体運動に伴う垂直視差の時間的変化が絶対距離知覚に与える影響2013

    • 著者名/発表者名
      足立崇, 金子寛彦
    • 学会等名
      日本視覚学会2013年夏季大会
    • 発表場所
      札幌市立大学(札幌)
    • 年月日
      20130724-20130726
  • [学会発表] 背景の視覚情報の有無による頭部ポインティングの精度の違い2013

    • 著者名/発表者名
      前川亮, 金子寛彦
    • 学会等名
      日本視覚学会2013年夏季大会
    • 発表場所
      札幌市立大学(札幌)
    • 年月日
      20130724-20130726
  • [学会発表] Repeated snowboard exercise with conflict between body rotation and delayed visual feedback in the virtual reality world enhances head stability and slalom run performance in the real world in normal young subjects2013

    • 著者名/発表者名
      Wada Y, Takeda N, Tsukamoto K
    • 学会等名
      2nd Joint World Congress of ISPGR and Gait and Mental Function
    • 発表場所
      Akita, Japan
    • 年月日
      20130622-20130626
  • [学会発表] 頭部静的roll傾斜中のSVVとOCRによる新しい平衡機能検査法の試み2013

    • 著者名/発表者名
      和田佳郎、山中敏彰、清水直樹、細井裕司
    • 学会等名
      第114回日本耳鼻咽喉科学会総会
    • 発表場所
      札幌(北海道)
    • 年月日
      20130515-20130518
  • [学会発表] 歩行時における視覚刺激速度変化の認識とその歩行速度への影響

    • 著者名/発表者名
      市川 慧, 金子寛彦
    • 学会等名
      電子情報通信学会2014年総合大会
    • 発表場所
      新潟大学(新潟)
  • [学会発表] 物体運動に伴う垂直視差の時間的変化が運動方向知覚に与える影響

    • 著者名/発表者名
      足立崇, 金子寛彦
    • 学会等名
      電子情報通信学会HIP研究会
    • 発表場所
      東北大学(仙台)
  • [学会発表] フワフワ感の解消を目指した<傾斜感覚適正化装置>の開発

    • 著者名/発表者名
      和田佳郎
    • 学会等名
      第1回 奈良県立医科大学 産学官連携シンポジウム
    • 発表場所
      奈良県立医科大学(奈良)

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公開日: 2015-05-28  

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