研究課題/領域番号 |
24500237
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
伊藤 聡 岐阜大学, 工学部, 准教授 (70291911)
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キーワード | 運動制御 / 知覚 / 平衡 / 制御 / 運動計測 |
研究概要 |
本研究はヒトの運動学習と知覚に関し,平衡の維持・制御を対象に運動計測によりその特性を明らかにし,ヒトがどのような制御を行っているかそのメカニズムの解明を目指している. 環境変化に対し,ヒトは運動パターンを変化させて対応する.この変化は運動学習として研究されているが,運動学習に伴い知覚も同時に変化していることが,近年,腕のリーチング運動の研究で明らかになった.同じような運動学習に伴う知覚変化は,リーチング運動以外の運動に対して起きていても不思議ではない.そこで本研究では,ヒトの平衡運動を対象とし,「平衡の学習に付随した知覚変化が起きている」という仮説を立て,そのbehaviorレベルでの立証を試みる. 平衡の実験では不安定な環境を被験者に提示する必要があるが,転倒時の安全性なども考慮しておく必要がある.そこで,立位よりも安全な座位により平衡実験を行う計画を立てた.前年度,座面がピッチとロールの2軸周りで回転し,同時に椅子全体が平行移動するような実験システムを構築した.今年度はこの実験システムを利用し,どのような実験を行えば平衡の知覚に変化が起きるのか,被験者に行わせる平衡の運動学習の内容について検討を行った.同時に,平衡における知覚変化をどのように定量化するかについても考察した. 運動学習については,ロール回転軸を制御の工夫でにより仮想的に移動させ,同時に椅子全体の側方向移動で生じる慣性力外乱と組み合わせて提示し,その条件下でバランスを維持させるタスクを発案した.また平衡テストとして,ヘットマウントディスプレイの視覚的指示に従い上体を傾斜してもらい,その姿勢が左右のどちらに傾いているかを回答させることで心理的な直立状態を推定し,それを用いて平衡の知覚を定量化することとした.パイロット・テストによりこれらの実験方法で予想されるような知覚変化とその検出ができる手応えを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平衡における知覚変化が起きるような運動学習に関する実験タスクと,平衡の知覚変化を検出する平衡テストを確定することを,本年度の計画として掲げていた.その計画に基づき,運動学習と知覚テストの実験手順がおおむね確定できた.実験を進めていくと改善すべき点などが生じてくるかもしれないが,現時点ではそれらの実験手順の確定をもって,計画通りに進んでいると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今後は確定した実験手順に従い,被験者のテストを繰り返し行っていく.予想通りに,平衡の運動学習により平衡の知覚変化が観察されたら,どのようにヒトが平衡の制御と感覚の補正を行っているか,そのメカニズムについて議論していく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
開発した実験装置の故障・破損が少なく,メンテナンスの必要がなかった.実験装置の大きな改善点も現時点では見つからなかった.また,成果発表を行っていないため,学会参加のための経費が不要であった. 製作した実験装置の保守・改良のため,電気部品・機械部品の購入にあてる.被験者が予定以上に必要であることが予想され,その謝金として利用する.また,学会発表のための旅費や参加費に使用する.
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