研究課題/領域番号 |
24500245
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
佐野 睦夫 大阪工業大学, 情報科学部, 教授 (30351464)
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キーワード | 認知リハビリテーション / 環境行動認識 / 認知行動評価 / リハビリ支援ロボット / 在宅支援 / 映像構造化 / 振り返りコミュニケーション |
研究概要 |
認知機能障害者の介護負担軽減および日常生活行動を通した自立促進を目的とし,遠隔認知リハビリという新しいリハビリ方式の確立に向けた取組として,下記の3点から研究を実施した. 1.生活空間の環境構造化と安心なリハビリテーション進行支援:環境に埋め込まれた距離センサやカメラ,身体に装着した加速度センサ,ロボットに搭載された能動センサの3つの観点から生活空間・行動の構造化を行い,信頼性評価を行った.遠隔認知リハビリテーション環境でのロボット能動視覚による認知障害者の視線行動からの危険行動予測方式やリハビリ担当者の視線行動分析について検討を行い,遠隔認知リハビリテーション構成法の検討を行った.(大会2件,研究会1件) 2.認知障害モデルに基づくインタラクション制御:人間とロボットの情動インタラクションにおける適応的引き込み制御と学習を進め,共感モデルを介した引き込み制御の有効性を確認した.(大会2件,シンポジウム1件,研究会1件) 3.気づきの誘発に基づく自立支援:注意行動モデルに基づくリハビリ映像を用いた振り返り支援の研究を進め,ハビリテーションにおいて向上が観察された行動,欠落した行動,危険な行動を支援システムが自動抽出する方式を検討し,基本的な支援システムを構築し,その有効性について評価を行った.(大会2件,シンポジウム2件,研究会2件) 上記成果を考慮し,高次脳機能障害に対する認知リハビリテーション実験を6カ月,延べ約10人,高齢者約30人に対する食生活行動改善実験を行い,前年度実験の成果も踏まえ有効性を確認した.(ジャーナル論文1件,会誌論文1件,国際会議1件,研究会2件)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生活空間の環境構造化と安心なリハビリテーション進行支援では,料理行動から一般の生活行動にリハビリ対象を拡大し,認知リハビリテーションに大きな影響を与える視線行動に焦点を絞り,生活空間・行動の構造化手法の信頼性評価が行えたことは大きな進歩であった.また,能動的視覚による情報獲得については現在,クラス数の拡大を行っており,実現への目途が着きつつある.遠隔環境でのリハビリ担当者の観察行動分析が行えたことも遠隔認知リハビリテーション環境を構築する上で効果的であった. 認知障害モデルに基づくインタラクション制御では,視線反応や情動反応に基づいた強化学習方式により,インタラクション制御を行い,対話の中から円滑な情報獲得の実現の方向性を確認できたことは,自宅での継続的な運用への効果として期待される.また,環境センサと連動したオノマトペ表現による情報提示も持続的なコミュニケーションを実現するための重要な要素として位置付けられる. 気づきの誘発に基づく自立支援では,注意行動に着目し,生活タスクの認識結果から導出される注意行動指標を体系化できたことは,生活の中でリアルタイムに認知行動評価ができることを意味しており意義が大きい.また,注意行動指標に基づく構造化された映像提示による振り返り支援システムを提案できたことも,今後振り返り支援を進めていく上で大きな前進である. 最後に,高次脳機能障害に対する認知リハビリテーション実験を2つの施設で長期および短期に渡り遂行評価でき,高齢者に対する食生活行動改善実験も実施できたことは,在宅での遠隔認知リハビリテーション方式を確立する上で大きな経験となった.
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今後の研究の推進方策 |
料理行動から生活全般まで適用範囲をさらに拡大し,生活空間の環境構造化と安心なリハビリテーション進行支援,認知障害モデルに基づくインタラクション制御,気づきの誘発に基づく自立支援のすべての面から改良を行い,実際の障害者を対象とした評価実験を遂行する.評価実験においては,大阪府立障がい者自立センターの正式プログラムとして協力をいただき,リハビリ担当者として,中山佳代氏,大出道子氏,萩原摩記氏に協力をいただく.民間施設として,なやクリニックにも協力をいただく.調理行動によらない生活全般の認知行動評価尺度を構築するために,慶應義塾大学ストレス研究センター長・同医学部精神神経科・加藤元一郎教授に新たに研究協力をいただく.アルツハイマー型の認知症患者への評価実験では,引き続き,京都大学医学研究科木下彩栄教授および久保田正和氏に研究協力を頂く.料理行動支援では,引き続き,京都府立大学生命環境科学研究科・大谷貴美子教授,松井元子准教授,村元由佳利助手,光森洋美博士課程院生に研究協力を頂く.顔向きによる注意の検出モジュール開発で,京都大学学術情報メディアセンター・中村裕一教授,近藤一晃助教,修士課程学生杜邦氏,迫匠一郎氏に研究協力を頂く.大阪工業大学側の研究協力者としては,引き続き,宮脇健三郎講師(環境構築・評価),修士課程学生・大井翔氏,松谷雄太氏,高潔氏(アルゴリズム作成・検証)を計画している.新たに,ロボット構築において,本学井上雄紀准教授に研究協力をいただく.卒業研究ゼミ学生は研究補助として位置付ける. 以上の研究計画に対して,実験推進のための出張旅費,料理リハビリ実験のための食材購入も含め,実験用ノートPC,センサ,ロボット用部品,映像記録用ビデオ購入,国内外での研究発表,英語論文の翻訳,情報収集のための出張などを予定している.在宅認知リハビリ実験協力者への謝金も本研究費で賄いたい.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,2014年度に予定している認知リハビリテーションの実験回数が上積みされ,費用が当初予定より若干多く必要であることが判明したため調整を行ったことによる. 2014年度は,認知リハビリテーション実験推進のための出張旅費,料理リハビリ実験のための食材購入も含め,実験用ノートPC,センサ,ロボット用部品,映像記録用ビデオ購入,国内外での研究発表,英語論文の翻訳,情報収集のための出張などを予定している.在宅認知リハビリ実験協力者への謝金も本研究費で賄いたい.
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