研究課題/領域番号 |
24500247
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
塚田 章 富山高等専門学校, 電子情報工学科, 教授 (40236849)
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研究分担者 |
秋田 純一 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (10303265)
前田 義信 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (90303114)
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キーワード | 実像処理 / 錯視 / 神経回路 / 受光素子 |
研究概要 |
本研究では,視覚系における優れた動き検出能力の要因の1つとして,受光細胞ごとに信号を時間連続的に扱うという点に着目し,実在する像を時間連続的に処理する「実像処理」と呼ぶ手法を構築することを目的とする.このため,①コンピュータを用いたソフトウェアエミュレーションによる実像処理の有効性の検証,②神経回路の側面からヒトの時空間的な情報処理のメカニズムの解明,③実像処理をリアルタイムで行うためのハードウェア実現方法の開発を行う.本年度は以下の成果が得られた. ①実像処理を行うエミュレータの構築についてはおおよそのプログラミングが終了した.また,移動体追跡実験に用いるためのパンチルトヘッドの仕様について検討した. ②明るさ知覚の際に生じる錯視現象(シュブルール錯視)に関して,これまでは時間変動のない定常的な振舞いを回路モデルで再現してきた.本年度は明るさの境界部分が時間的に変動する(移動する)際に,回路モデルがシュブルール錯視を再現可能かどうかを回路シミュレータSPICEで調べた.その結果,明るさが高速に動いてもシュブルール錯視込みで 回路モデルはその境界を知覚可能であることが示された. ③網膜上では受光素子ごとに独立な連続時関係として処理が行われているが,このうち動き検出をとりあげ,受光素子ごとに独立・連続時関係において動き検出を行うアルゴリズムを,回路的な実現可能性の観点から再検討し,オペアンプを用いる積分回路と微分回路を組み合わせた回路構成で実現可能なピーク検出型のアルゴリズムが適しているとの結論を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①実像処理を行うエミュレータの構築についてはおおよそのプログラミングが終了した. ②回路シミュレータで設計した側抑制型ニューラルネットワークを用いて,時間的に変動する明るさ知覚をシュブルール錯視込みで再現することに成功した.また,情報の伝達効率を上げるため,ニューロンモデル間をつなぐ抑制性シナプスモデルにおいてフォトカプラを導入した. ③受光素子ごとに独立・連続時関係において動き検出を行うアルゴリズムを,回路的な実現可能性の観点から再検討し,オペアンプを用いる積分回路と微分回路を組み合わせた回路構成で実現可能なピーク検出型のアルゴリズムが適しているとの結論を得た.
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの研究者が以下の方策を推進しつつ,互いの成果について議論し連携を図る. ①構築したエミュレータを用いて,時間の連続性を考慮したシミュレーション方法について検討する.また,実験に用いるパンチルトヘッドに関して,回転速度の制御が可能な製品を検討する. ②フォトカプラの導入により,削減すべき消費エネルギーが逆に上昇した可能性がある.これを評価することは今後の課題である.また,実際の回路を構築し,「時間的に変化するシュブルール錯視」の再現を試みる. ③決定した独立・連続時関系におけるピーク検出型の動き検出アルゴリズムを,オペアンプを用いるアナログ回路でシミュレーション,および実装し,その動作検証,および外来ノイズに対する耐性などの検証を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
移動体追跡実験に用いるためのパンチルトヘッドに関して,回転速度を任意に制御できる製品の購入を検討しているが,ほとんどの製品は回転速度を段階的に選択するものである.視覚情報処理モデルの構築が終了するまで,購入を先延ばしにしていた. 満足できる仕様の製品が見つからない場合は,実験方法を検討し,できるだけ仕様を満たす製品を購入する.
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