超階調表示による印象変化と画像コンテンツの関連性を調査することを目的とした。 まず、実験試料として、ハイビジョン・システム評価用標準動画像第2版から選定した画像や屋内外で撮影した多種多様なハイダイナミックレンジ画像から、風景や建物、人物、動物、光沢のある物体などを含めた16種類の画像コンテンツを用意した。ただし、画像コンテンツを選定する際に、画像中心に目を引き付けるものがある画像と目を引くものがない画像が半々になるように選定した。次に、これらの実験試料を、人の目が認識可能な最小輝度差に基づいたGSDF(Grayscale Standard Display Function)の輝度差を近似するように2 台のプロジェクタの出力輝度を組み合わせて、530階調、256階調、128階調、64階調、32階調の5 種類で表示した。そして、これらの階調表示における画像の印象と画像コンテンツの誘目性を、主観評価実験により調査した。評価語は、前年度の先行研究を参考に「好き」、「滑らかな」、「自然な」、「迫力がある」、「嫌い」、「粗い」の6語とした。被験者は20代男性13名、女性18名の計31名とし、被験者には「そう思わない」から「そう思う」までの7段階の評価尺度により、表示画像に対する各評価語の当てはまり度合を回答してもらった。さらに、全画像を評価した後にアンケートを実施し、評価する際に画像のどこを見て判断したかを印してもらった。 その結果、ある一定の階調数までは、階調数の増加に伴い、画像の印象が向上することがわかった。また、この向上は、画像コンテンツに強く影響されるが、肌や空などグラデーション領域を含む画像で起こりやすいと言えた。ただし、画像中にグラデーション領域が含まれていたとしても、それらが観賞者の目を引く対象でない場合は、印象変化は起こらない可能性が高いことも示された。
|