研究課題/領域番号 |
24500252
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
長谷川 光司 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50272761)
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研究分担者 |
阿山 みよし 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30251078)
渡辺 裕 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30400716)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 視聴覚相互作用 / 主観的同時点 / 主観的音圧レベル / 奥行き感 |
研究概要 |
平成24年度は,映像の奥行き感の変化に対する,主観的同時点および主観的音圧レベルの変化の抽出に重点をおいた実験を実施する.実験では,視聴覚刺激として,お互いの関連性が強く,奥行きを感じやすいものを選び,太鼓を叩く人のムービーとその時の打撃音を用いた.映像刺激は,コンピュータから出力し,プロジェクタを用いて1.2 m(W)×0.85 m(H)のスクリーン上に投影した.音声刺激は,ヘッドホンを介して提示した.その際,空間伝達関数を考慮するため,間近で収録した打撃音に距離に応じた空間インパルス応答を事前に畳み込んだ音刺激を用いた.被験者は,スクリーンの中心から2.6 m 離れた位置にある椅子に座らせ,頭をヘッドレストを用いて固定させた.映像の奥行きは,5, 10, 20, 40 m とし,それぞれの距離毎に-40~40%の制御を行った.また,視聴覚刺激間の時間差については-8~8 F(1F=1/30 s),音刺激の大きさについては基準の音圧レベルを-12~12 dBで制御した.そして,様々な組み合わせた視聴覚刺激を被験者に提示し,映像と音の印象について,映像に対して音が「早い」または「遅い」,もしくは,映像に対して音が「大きい」または「小さい」のどちらかを回答させた.実験の結果,映像の奥行き感を増加(遠くにする)させて提示すると,主観的同時点は大きくなる(遠い方向にシフト)傾向があり,近距離の場合の方が,奥行き変化の主観的同時点への影響が大きかった.また,主観的音圧レベルについては,映像の奥行き感を増加させると,小さくなる(遠い方向にシフト)傾向があり,遠距離の場合の方が,奥行き変化の主観的音圧レベルへの影響が大きかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,有意味な視聴覚コンテンツ(視覚及び聴覚コンテンツ相互の概念的な結びつきが強い刺激)を様々な組み合わせで提示することによって,以下に示す視聴覚刺激間(ある事象の映像とその音)の等価性,(1) 音刺激を伴った映像刺激に対する距離知覚(音に対する映像の奥行き感の等価性),(2) 奥行きのある映像刺激に対する音刺激の主観的な音圧レベル(映像に対する音の大きさの等価性),(3) 奥行きのある映像とその音の主観的な同時点(映像と音の提示タイミングの等価性),(4) 事象が二つある場合の相対的な視聴覚間の等価(前記(1)~(3)について)を実験的に明らかにすることを目的としている.現在までに,単独事象での上記(1)~(3)がほぼ終了しており,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,二つの事象が生じた場合 (ここでは,太鼓を叩く映像を相対的に提示する) の,主観的同時点及び主観的音圧レベルの変化について検討していく.平成24年度と同様,太鼓を叩く人のムービーとその時の打撃音を用いる.だだし,太鼓は,左右に2つ配置し,それぞれの太鼓に叩く人がいるものとする.実験では,まず右側の太鼓を鳴らし,次に左側の太鼓を鳴らすものとし,被験者には2回目に鳴った太鼓の印象について評価させる.ここで,撮影位置から右側の太鼓までの距離を基準距離とし,左側の太鼓までの距離を判定距離とする.撮影位置から太鼓までの距離(奥行き)としては,10, 20, 30, 40, 50 mの5種類とし,いずれかの距離に基準となる太鼓(右側)を配置し,これと同距離にならない4種類のいずれかの距離に2つ目の太鼓(左側)を配置する.音刺激については,右側の太鼓の音圧レベルは各距離での実測値を用いる.左側の太鼓の音圧レベルについては,各距離での音圧レベルの実測値を基準に,-6~6 dBの音圧差を付加する.また,視聴覚刺激間には-8~8 F(1F=1/30 s)の時間差も付加するものとする.そして,基準距離5種類と判定距離4種類において,音圧差及び時間差を付加した刺激をランダムに組み合わせた刺激を被験者に提示する.被験者には,後に鳴った太鼓の音が映像の印象に対して,「大きい」または「小さい」,もしくは,「早い」または「遅い」のどちらかを回答させる.そして,実験結果の統計的な解析により,それぞれの場合における主観的同時点及び主観的音圧レベルを求める.これにより,太鼓の相対的な奥行き感を変化させた場合の,主観的同時点および主観的音圧レベルの等価点の分布を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度末に,映像提示装置などの研究設備に故障が生じたため,保守・管理関連の消耗品の購入が必要となった.また,本研究に関する情報収集のため学会への参加,並びに,昨年度の成果の国際会議での発表に向けた英文校閲を実施したため年度を超えての使用となった. 今年度は,実験装置の充実を図ると共に,被験者への謝金,本研究に関わる資料の収集及び成果発表に関わる旅費などに使用する予定である.
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