研究課題/領域番号 |
24500252
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
長谷川 光司 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50272761)
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研究分担者 |
阿山 みよし 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30251078)
渡辺 裕 宇都宮大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30400716)
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キーワード | 視聴覚相互作用 / 主観的同時点 / 主観的音圧レベル / 奥行き感 |
研究概要 |
本研究では,互いに関連性が強い映像及び音刺激を用い,奥行き感のある映像と視聴覚刺激間の時間差,及び主観的等価音圧レベル(ある距離で生じた視覚イベントの大きさに相当すると知覚される音圧レベル) の関係を調査することを目的としている.平成25年度は,映像の奥行き感の相対的な変化が,主観的等価音圧レベルに与える影響について検討した. 実験刺激には,映像と音の提示開始時間の同期が取りやすく,経験的に音の大きさが把握しやすい,太鼓を叩く映像とその太鼓音を用いた.映像刺激の撮影距離は,10, 20, 30, 40, 50 m の5種類とした.映像刺激として,5種類のいずれかの距離に基準となる太鼓 (右側) を配置し,これと同距離にならない4種類のいずれかの距離に2つ目の太鼓 (左側) を配置した.ここで,右側の太鼓までの距離を基準距離とし,左側の太鼓までの距離を判定距離とする.また,この左右2つの太鼓の間の距離を相対距離とする.音刺激は,各距離での空間伝達関数を畳み込んだ刺激を用いた.基準距離 (5種類) と判定距離 (4種類) に対し,音圧差 (5種類) をランダムに組み合わせた刺激を被験者に提示した.実験刺激の提示時間は1 試行につき約20秒とした.被験者には1 試行終了毎に,実験刺激の印象について,後になった太鼓の音が映像の印象に対して,「音が大きいと感じた」か「音が小さい感じた」かのどちらかを回答させた. 実験の結果,主観的等価音圧レベルは,基準が前方にある場合には実測値よりも大きくなり,基準が後方にある場合には小さくなる傾向が見られた.つまり,基準が前方にある場合には後方の太鼓が拡大視され,基準が後方にある場合には前方の太鼓が過小視される可能性があることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,有意味な視聴覚コンテンツ (視覚及び聴覚コンテンツ相互の概念的な結びつきが強い刺激) を様々な組み合わせで提示することによって,以下に示す視聴覚刺激間 (ある事象の映像とその音) の等価性,(1) 音刺激を伴った映像刺激に対する距離知覚 (音に対する映像の奥行き感の等価性),(2) 奥行きのある映像刺激に対する音刺激の主観的な音圧レベル (映像に対する音の大きさの等価性),(3) 奥行きのある映像とその音の主観的な同時点 (映像と音の提示タイミングの等価性),(4) 事象が二つある場合の相対的な視聴覚間の等価 (前記(1)~(3)について) を実験的に明らかにすることを目的としている.現在までに,単独事象での上記(1)~(3)および,相対事象である(4)における,映像の奥行き感の相対的な変化が,主観的等価音圧レベルに与える影響に関する実験が終了しており,おおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,相対事象 (ここでは,太鼓を叩く映像を相対的に提示する) における,映像の奥行き感の相対的な変化が,主観的同時点 (映像刺激と音声刺激が同時に提示されていると知覚される視聴覚刺激間の時間差) に与える影響について検討していく.平成25年度と同様,太鼓を叩く人のムービーとその時の太鼓音を用いる.太鼓は,左右に2つ配置し,それぞれの太鼓に叩く人がいるものとする.実験では,まず右側の太鼓を鳴らし,次に左側の太鼓を鳴らすものとし,被験者には2回目に鳴った太鼓の印象について評価させる.ここで,撮影位置から右側の太鼓までの距離を基準距離とし,左側の太鼓までの距離を判定距離とする.撮影位置から太鼓までの距離(奥行き)としては,10, 20, 30, 40, 50 mの5種類とし,いずれかの距離に基準となる太鼓(右側)を配置し,これと同距離にならない4種類のいずれかの距離に2つ目の太鼓(左側)を配置する.音刺激については,右側の太鼓の音圧レベルは各距離での実測値を用いる.左側の太鼓の視聴覚刺激間には-6 ~ 6 F(1F=1/30 s) の時間差も付加するものとする.そして,基準距離5種類と判定距離4種類において,時間差を付加した刺激をランダムに組み合わせた刺激を被験者に提示する.被験者には,後に鳴った太鼓の音が映像の印象に対して,「早い」または「遅い」のどちらかを回答させる.そして,実験結果の統計的な解析により,それぞれの場合における主観的同時点を求める.これにより,太鼓の相対的な奥行き感を変化させた場合の,主観的同時点の等価点の分布を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
処理時に利用するソフトについて,最新版へのバージョンアップの次期がずれ込んでしまっため,繰り越しが生じてしまった. 今年度は,実験装置のさらなる充実を図ると共に,被験者への謝金,本研究に関わる成果発表の旅費などに利用する.
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