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2013 年度 実施状況報告書

質感についての記憶構造とその感性効果

研究課題

研究課題/領域番号 24500254
研究機関千葉大学

研究代表者

小林 裕幸  千葉大学, 融合科学研究科(研究院), 教授 (60134350)

キーワード記憶質感 / 先鋭性
研究概要

◆1/fノイズとホワイトノイズのサンプルを同時に被験者に呈示し、被験者がどちらを選ぶかによって、被験者各人の記憶質感の再現によりふさわしいノイズ種類を調べた。先行研究で用いられた7点の対象物の写真に1/fノイズあるいはホワイトノイズを段階的に付加し、これらのサンプルを被験者に呈示し、記憶している質感、実物の質感(実物を見ながら)に近い順に並べ替えてもらった。段ボールとティッシュの質感の再現において記憶質感、実物質感ともにホワイトノイズがふさわしいこと、ジャガイモ、板、玉葱の質感の再現には1/fノイズがふさわしいこと、そして新聞、割り箸でははっきりした傾向が見られないことがわかった。
◆自然画像を用いて、ノイズ付加によるシャープネス向上効果について調べた。絵柄には、空間周波数成分の異なる評価画像を選択することができる樹皮とせんべいやクッキーの実物大の写真を使い、ぼかし無しの写真と、ぼかした写真を用いた2つのグループの実験を行った。樹皮の写真を用いた実験と、対象物の大きく異なるせんべいの写真を用いた実験で結果に同じ傾向が見られ、絵柄に依存しないことが確認された。ノイズ付加によるシャープネス向上効果の周波数依存性、すなわち、シャープな画像より、ぼかした画像のほうがノイズの効果が高い、ぼかしが大きい方がノイズ付加による効果が顕著である、ということ結果は、単一の周波数だけを含む1次元または2次元の正弦波を用いて実験された先行研究において得られた、矩形波とチェッカーボードでは効果がなく、より低周波の画像でより効果があるという結果と一致する。また、先行研究では言及してないテクスチャの影響についても、新たに知見を得ることができた。すなわちラインが多い画像はノイズ付加による効果は小さく、平らでテクスチャ感のない画像は効果が大きい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

◆それぞれの対象物で、1/fノイズとホワイトノイズのどちらが記憶質感の再現によりふさわしいのかについての知見を得ることができた。この成果は、本研究の目的の一つである「記憶質感がもたらす感性効果の機構解明」に重要な知見となる。
◆これまで、単一の周波数だけを含む1次元または2次元の正弦波画像においてのみ得られていた、ノイズ付加による質感の変化がもたらす鮮鋭性の向上効果の空間周波数成分依存性についての知見を、自然画像においても得ることができた。この成果は、記憶質感がもたらす感性効果の一つと考えられる、ノイズ付加による鮮鋭性向上効果の機構解明につながる成果と言える。

今後の研究の推進方策

◆ノイズ付加による鮮鋭性向上効果の機構解明を行う。各対象物の記憶質感に、合うノイズを付加したときと、合わないノイズを付加したときの鮮鋭性向上効果の大きさを比較することで、記憶質感がこの鮮鋭性向上効果の要因となっているかを検証する。
◆「実物質感」、「記憶質感」データベースの作成:24年度に確立された方法に従って、多くの物について表面粗さ、「実物質感」、「記憶質感」のデータベースを作成する。「記憶色」では世代(小林美智代,棟方明博,鈴木恒男,岩崎晶子,日本色彩学会誌,15,17(1991))、性別(M.Yamamoto, Y-H Lim, X.Wei, M.Inui, H.Kobayashi, Imaging Science Journal, 51,163(2003))、国・地域(上のYamamotoらの論文に同じ)などといったグループごとに違いが観られた。質感でもこのようなグループに分けてデータを収集する必要がある。
◆「記憶質感」自動付加システムの構築:ここで作成したデータベースを活かし、被写体の「記憶質感」に基づき粒状度を自動的に調節する画像処理システムを構築する。

次年度の研究費の使用計画

購入物品が予定より安く購入できたため。
実験条件を増やすため、実験に必要な物品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件)

  • [雑誌論文] A Study of Ken Domon’s Photographic Books “Hiroshima” and “Children of Chikuho” from the Perspective of Media Theory2013

    • 著者名/発表者名
      Shirayama, Hoyano, Ueno, Aoki, kobayashi
    • 雑誌名

      Journal of Imaging Science and Technology

      巻: 57 ページ: 10506-1-10506-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 土門拳写真集『筑豊のこどもたち』の研究 -画質やレイアウトの印象への影響-2013

    • 著者名/発表者名
      白山,仲原,青木,小林
    • 雑誌名

      日本写真学会誌

      巻: 76 ページ: 324-332

    • 査読あり
  • [学会発表] 種々写真集の電子書籍化による印象変化について

    • 著者名/発表者名
      上野,今泉,青木,小林
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉市)
  • [学会発表] 質感についての記憶構造とその感性効果

    • 著者名/発表者名
      陳,趙,今泉,青木,小林
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉市)
  • [学会発表] 視覚的触覚の研究

    • 著者名/発表者名
      高橋,今泉,青木,小林
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      千葉大学(千葉市)
  • [学会発表] For Digitization of Photographic Books

    • 著者名/発表者名
      Ueno, Aoki, Kobayashi
    • 学会等名
      The International Conference on Culture and Computing
    • 発表場所
      立命館大学(京都市)
  • [学会発表] 質感についての記憶構造

    • 著者名/発表者名
      趙,青木,小林
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      京都工芸繊維大学(京都市)
  • [学会発表] 粒状付加による鮮鋭性の増大について

    • 著者名/発表者名
      万,中尾,青木,小林
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      京都工芸繊維大学(京都市)
  • [学会発表] 写真集の電子書籍化に関する研究 -発光型と反射型ディスプレイの比較

    • 著者名/発表者名
      横山,今泉,青木,小林
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      京都工芸繊維大学(京都市)
  • [学会発表] 大型ディスプレイを用いたコミュニケーションにおけるリアリティーの諸側面に関する実験心理学的検討

    • 著者名/発表者名
      石黒,盧,青木,小林,一川
    • 学会等名
      日本写真学会年次大会
    • 発表場所
      京都工芸繊維大学(京都市)
  • [学会発表] MDAクラスタリングと色トレスを用いたドット絵風画像の生成

    • 著者名/発表者名
      飯島,今泉,青木,小林
    • 学会等名
      映像情報メディア学会冬季大会
    • 発表場所
      芝浦工業大学(東京都)
  • [学会発表] 画像感性空間の構造の解明

    • 著者名/発表者名
      松田,鎰谷,相崎,鈴木,青木,小林
    • 学会等名
      日本視覚学会
    • 発表場所
      工学院大学(東京都)
  • [学会発表] Memory Texture as a Mechanism of Improvement in Preference by Adding Noise

    • 著者名/発表者名
      Zhao, Aoki, Kobayashi
    • 学会等名
      Electronic Imaging
    • 発表場所
      Hilton San Francisco(San Francisco, USA)

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公開日: 2015-05-28  

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