本研究は,人間・環境・技術が織りなす「持続的共生社会」のあり方とその構築可能性について,高度技術が果たす社会的寄与の観点から究明し,経済至上主義や物質主義に基礎をおく近代産業型の価値理念や環境負荷型生産方式がもたらす過剰社会から,精神的豊かさと相互信頼を基礎とするポスト近代的価値や環境配慮型・対話型生産方式による共生社会へと指向するマクロ的社会趨勢を感性概念による近代価値の社会倫理的パラダイム転換として理論的に検証した.そこにおいて日本の市場指向性と産業政策が,伝統的な宗教精神性に依拠する共生思想に文化的に基礎づけられ,感性工学領域での産業発展の構造パターンを維持している点が明らかとなった.
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