研究課題/領域番号 |
24500262
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
岡林 繁 名城大学, 都市情報学部, 教授 (20278328)
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キーワード | 自動車 / 表示装置 / 作動記憶 / オーグメンテッドリアリティ / ヘッドアップディスプレイ / 探索応答時間 / 照合 / ナビゲーション |
研究概要 |
今年度は,昨年度構築した実験系を使って,予備実験で仮説した「メンタルエクスパッション」の存在を10名程度の被験者による確認・検証実験を行った.具体的には,参照画面の画角(θ)と,探索画面の画角(φ)の二つの関係をパラメータにして,AR (Augmented Reality display system)と,通常のHUD,HDDの三種類の自動車用表示装置について,探索応答時間特性を評価した.結果は,予測した通り,「メンタルエクスパッション」の効果と思われる現象が確認された.討議機会を広く持つため,国際会議ポスターセッションで発表し,論文集に掲載された.また.国内学術雑誌にも投稿し審査中である.以下に概要を述べる. (1)《画角依存評価実験》 表示情報である参照画面の画角(θ)と,前景情報探索画面の画角(φ)の二つの関係を変化させ,探索応答時間特性を評価した.視標探索過程は,①頭部と眼球の動きによる探索,②眼球の動きによる探索,③眼球運動なしの探索.の3つのモデルで表現できる.①②の頭部や視線移動のモデルで説明が可能となる. (2)《メンタルエクスパッションの仮説》③眼球運動なしの探索における特性では.頭部や視線移動のモデルでは説明ができないばかりか,先行研究で見られる「注意の領域の拡大」でも説明が困難であることから,「メンタルエクスパッション」の存在を確認できた. (3)《工学的な意義》 ①②③のケース,すべてにおいて,参照画面と探索画面の画角が同一条件で,探索応答時間が最小値をとるということは,前景内の物標識を指示するタイプの自動車用表示装置においては,その指示領域の大小に拘わらずAR表示方式が最も優れていることを示唆している. (4)《成果の公表》 2件の査読論文,国内学会の討議,国際会議投稿を行い,現在,学術雑誌への新たに投稿し審査中.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
主として,前年度の記載した実験系構築の遅れが今年度へ影響していることに加え,被験者の選択に時間を要している.被験者は,主として学生に依頼しているが,自動車免許を有し,日常運転を行っている学生の中で①動作の正確さと②迅速さに関する反応基準が,実験を通してほぼ一定であることが望ましい.反応基準や反応精度が安定している被験者は,予備実験による結果から選択しているため,これが予想以上に時間を要しているkとによる. 来年度は3年目を迎えることから,また別途述べる人員の強化策もありリカバリーが可能と思われる.
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今後の研究の推進方策 |
基本的は,二つの柱から研究を推進する.第一は,被験者数を増加させ,仮説の強化を図ることである.第二には,メンタルエクスパンションにおける情報処理過程と,現実の自動車運転環境を想定した場合の作動メモリの寄与を明らかにすることである. このため,昨年度異動したポストドクター学生の実験実務力を補足するため,26年度から新たに特任助手(本研究室博士課程修了者)の実験実務力を配置した.この強化策により今後の研究進展が期待できると確信している.
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次年度の研究費の使用計画 |
主として被験者への謝金支出が遅延している分である.これは,前年度の実験系構築の遅れに加え,研究遅延理由に述べたように,被験者の選択に予想以上に時間を要したためである. 昨年度は実験実務者が抜け進捗が遅れたが,今年度は別項記載のごとく,博士課程修了者一名の人員補強が可能となったため予定通りの進行が期待できる.研究費使用計画は,予定通り①被験者等の実験協力者への謝金,外部発表,翻訳校正費用等の支払に加え,②一部にコンピュータの更新費用に引き当てたる.
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