本研究では人間の視覚による品質判断基準を探るため,相対的な違和感と絶対的な違和感に評価を分けながら,品質基準が成立する条件を検討した.相対的な評価としては同画面上に存在する顔画像を修正するタスクを実施した.結果から,違和感は個人差があるものの,不自然な部位に対しては誘目点が共通であり,特定の条件を設定できる可能性を得た.しかし,相対評価ゆえに,基準とする事象も変化してしまうような場合には基準自体も不確実になる恐れがある.また,相対的な観察ではあるが,違和感に対する直接的な原因が推定しにくい事象が混入することで違和を感じる能力は大きく変化することも明らかにした.最終的には絶対的な違和感を評価する挑戦的な課題を実施した.本評価は物体の材質特定をタスクとしたが,絶対的な基準を設定するのは非常に難しく,記憶を元に基準を決めることの困難さを示す結果となった.本研究は人間がものの良し悪しを決める品質基準に対して,違和感を定量化するという挑戦的な切り口で検討を行ったが,最終的に明確な判断基準を打ち立てるまでには至っていない.しかし判断基準を制定する際に注意すべき条件と過程を明確にすることができ,今後の品質基準制定に対する重要な留意項目を提言することができたと考える.
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