本研究では,映像に同期させた音響やイスの振動,香り,風等の複合感覚を同時に提示することで,現実感だけでなく,迫力感や楽しさなどの感性向上効果を付与する技術の開発を目指す.そして,その感性向上効果を脳内血液量の変化およびSD法によるアンケートにより評価し,より向上効果のあるシステム制御技術を確立することを目的とする.本研究期間においては,まず,映像に同期させてイスを揺らすことによる複合感覚の感性向上効果について重点的に研究した.イスと感性の基本特性を明確化し,ジェットコースター映像に同期してイスを揺らすだけでなく,香りや風を映像に同期して制御する個々の技術についても検討した.また,ウェアラブル光トポグラフィによる脳内血液量の測定について検討し,映像,振動,香りから得られる感性と脳内血液量との関係性を明らかにした.さらに,映像コンテンツとして,CG制作ソフトウェアを用いて,車の運転席からの眺めを想定した動画などを制作した. 最終年度の研究実績としては,(1)映像と振動を提示した状態で脳内血液量を測定し,楽しさなどの感性と脳内血液量との関係について検討したこと,(2)これまで手動で香りを提示していた装置を改良し,PCからの信号により香を提示できるようにしたこと,(3)提示する映像として,車の運転席から仮想の都市を移動するCGを制作したことなどが挙げられる. 今後の課題としては,すべての刺激を同時に提示した場合の効果について明らかにすることが挙げられる.
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