研究実績の概要 |
本研究では,“こころの動き”が,知覚感受性や記憶の程度に影響を与える脳内メカニズムを明らかにする事を目的とした.具体的には,報酬や罰を伴う嗅覚学習行動が,辺縁系皮質の神経ネットワークの,どの部位に,どのような機能変化を生じさせるのか,その機能変化は海馬や扁桃体の情報伝達パターンにどのような影響を及ぼすのかという問題を明らかにする為に①条件付け学習モデル動物の単離脳を用いた ex vivo 脳機能解析システムを新たに構築し,これにより②情動や報酬予測行動を支える嗅覚神経回路の探索と動作機構の解析を行うことを目指した. 平成26年度は,①の課題については,多点電極(16ch)により記録された集合電位記録から電流源密度解析を行うツールをMatlabにより開発した.昨年度,再構築した単離脳実験システムを用いて測定した梨状皮質および扁桃体皮質部位の脳活動の解析に適用し,嗅索への繰り返し刺激が扁桃体皮質の深部領域を新たに活性化させている事が明らかとなった.また,モルモットを用いた嗅覚嫌悪学習課題に取りかかった.②の課題については,昨年度までに,皮質および海馬を含む脳スライスにおいて,嗅周囲皮質36野への繰り返し刺激によって35野に誘導される持続性の神経興奮に,緩やかに不活性化するカリウム電流が関与していることがわかってきた.データを解析した結果,使用する実験動物の週齢差が,本実験結果に与えている可能性が示唆された為,検討した.現時点では実験数が十分では無い状況ではあるものの,幼若な動物ほど,持続性の神経興奮が生じにくいという傾向が得られつつある.
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