研究課題/領域番号 |
24500270
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研究機関 | 室蘭工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 幸司 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00179269)
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研究分担者 |
寺本 渉 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30509089)
渡部 修 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50343017)
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キーワード | 画像・動画像圧縮 / ベクトル量子化 / 顕著性領域 / グローバル動きベクトル / マルチメディア通信 / 災害 |
研究概要 |
災害時においては,安否確認・被害状況の確認のためにインターネット・携帯電話のアクセスが急増して輻輳(通信が要求過多によって成立しない状態)を引き起こし通信ができない状態になる可能性が高い。本研究課題では,ベクトル量子化による画像・動画像の符号化によって演算能力が低く,通信容量が小さな端末でも通信ができる技術の確立を目指している。 25年度の研究においては,画像から重要な部分(顕著領域)を抽出することによって符号化の効率を向上させた。画像から顕著性領域を抽出する方法は,Achantaらによって提案されている方法に基づいて行った。画像にガウシアンフィルタを施した後,縦・横方向に注目画素と近い側の端との距離を2倍してできた四角領域内の平均階調値を求めた画像を作成する。これらの画像の各画素におけるユークリット距離を求めることで顕著性マップを作成した。得られた顕著性マップを2値化することによって顕著性領域を抽出した。画像を顕著領域と非顕著領域に分けることによってそれぞれをクラスタリングすることによってコードブックを構築した。このことによって,画質を向上させることができた。 動画像をベクトル量子化によって効率的に符号化するためには,動き補償によって各フレーム間に必要な情報だけを抽出する必要がある。本研究課題では,グローバル動き補償を導入することによってカメラの移動に伴うパンやチルドによって画像全体が同一方向へ動く場合を1つのベクトルで画面全体を予測できるようにした。画面全体同一な動きをフレーム全体の動きとして記録し,同一な動きと異なった動きをする画像ブロックに対しては,個別に動きベクトルを記録することで,記録するブロック数を削減しベクトル量子化を効率的に行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度において,25年度の推進方策として5項目について目標を設定していた。(1)コードブック構築のためのクラスタリングアルゴリズムの初期値の決定方法に関する研究である。このことについては,K-menas++アルゴリズムによって初期値を簡単に決定できることが実験的に確かめることができた。(2)顕著性抽出の研究については,Achantaらの方法に基づいて画像の顕著領域を抽出するアルゴリズムを実装することができた。画像全体についてベクトル量子化する方法と画像全体の他に顕著領域に対してもベクトル量子化する方法と圧縮率・画質の観点から比較実験を行った。コードブックのコードベクトル数は,256としてクラスタングには,k-means法を用いてその有効性を確認できた。 (3)として進化計算によるコードブックの最適化については,遺伝子を符号化する方法を画像ブロック単位で行っていたが,画像ブロック単位では基本的に初期ブロックの組み合わせ最適化になるため最適化に問題があった。25年度では,画素単位で実数値でGAを用いることによって実験を行い一定の成果を得ることができた。(4)動画像圧縮の動き補償ベクトルの研究については,グローバル動き補償を実装し,実験によってその有効性を確認することができた。画像の顕著領域を抽出することによって顕著領域の動き補償については,できておらず26年度の研究課題となる。(5)予測アルゴリズムの研究については,ベクトル量子化ための予測符号化の研究を進めている段階である。動画像におけるI,B,Pピクチャをベクトル量子化するときに差分画像によって量子化するアルゴリズムについて研究をしている。(6)の課題であるパケット化,ストリーミング技術をベクトル量子化によって実装するための予備的実験について検討している段階である。以上,6つの課題についておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(1)26年度の研究においては,開発した顕著性領域の抽出アルゴリズムを用いることによって動画像のベクトル量子化による符号化を行う。また,動きベクトルの導出アルゴリズムにファジィ理論を応用することによってファジィ動き補償アルゴリズムを開発する。今年度開発した顕著性領域抽出アルゴリズムによって顕著領域用のコードベクトルを求める。顕著領域のコードベクトルから顕著領域の動き補償ベクトルを導出するアルゴリズムを研究する。グローバル動き補償,顕著領域の動き補償,局所的な動き補償を階層的に行うことによって効果的な動き補償によって圧縮の効果を向上させる。この点は,26年度の研究では計画していない課題であるが,これまでの2年間の研究成果を踏まえると動画像を効率的に符号化するためには,顕著性領域のファジィ動き補償アルゴリズムを開発する必要がある。 (2)予測符号化アルゴリズムの研究 この研究は課題は,25年度において計画段階での開発の途上にある。このため,26年度においても引き続き研究を遂行する必要がある。特に,顕著性領域の予測符号化を行うことによってより効果的な符号化が実現できると考えられる。 (3)ストリーミングアルゴリズムの研究 この研究課題は,25年度においてアルゴリズムの検討を行った。ベクトル量子化では,コードベクトルのインデックスを送信するが,通信回線では,データをパケットとして送信する必要がある。パケット化したデータを受信側で受け取って,コードブックを用いて復号,一旦メモリに記憶させることによって順次動画像として復号するアルゴリズムを開発する。 (4)これまで研究したアルゴリズムを実装し画像・動画像通信システムとして開発する。開発は汎用的に用いられているMATLABを用いる。また,開発したシステムの評価を通信実験によって行う。最後に,災害時を想定したときの妥当性について評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該助成金が生じた理由は,当初,24年度の成果発表のために外国旅費を計上していた,しかし研究進展状況から成果発表を1年延期して,研究が成果が十分な段階に達してから発表する方が効果的であるとの判断に達した。このため当該助成金が生じたものである。25年度の研究において動画像から顕著性を抽出し,動画像動きベクトルを求めるアリゴリズムの開発において海外発表するまでの十分な成果を得ることができなかった。また,顕著性抽出を動画像の圧縮に応用するアルゴリズムの開発も海外成果発表のためにはさらに進展させる必要があると判断した。このため成果発表は国内学会の発表に止めたことにより当該助成金が生じたものである。 当該助成金は,26年度において研究成果発表のために使用する計画である。特に,海外で開催される国際会議での論文発表による成果発表を行う予定であり,このための旅費として使用する。
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