研究課題/領域番号 |
24500271
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野美 武 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70312676)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 感性情報学 / ニューラルネットワーク / 超伝導 / 組合せ最適化問題 |
研究概要 |
本研究では、組合せ最適化問題を解くホップフィールド型ニューラルネットワークを、超伝導デバイスによるニューロン素子で構成し、数値解析と集積回路上での動作から、そのネットワークダイナミクスを解析することを目的としている。 本年度は、(1)ホップフィールドネットワークを実現するためのニューロン回路の最適化として、出力が平坦で電流ゲインの高いしきい値特性を有するニューロン回路の設計・試作・測定を行った。その特性を実現するために、2段の結合SQUIDをカスケードに接続する手法を新たに提案した。初段は従来と同じ回路パラメータを持つ。一方、2段目は平坦な出力特性を得るために、1接合SQUIDのインダクタンス値を大きくした構成である。インダクタンス値を大きくすることで、2段目の結合SQUID単独ではヒステリシスを伴う入出力特性を示すが、初段の出力がステップ的であり、2段目の出力はヒステリシス領域を通過した領域で出力電圧を発生する。結果として、平坦な出力特性を持つしきい値特性が得られ、電流ゲインも従来のものより約30%大きな回路が得られた。この設計に基づき、超伝導工学研究所のチップファンダリを利用したNb/AlOx/Nb集積回路のレイアウト設計と集積化を行い、実測での動作が確認された。 また、(2)組合せ最適化問題を解くニューラルネットワークの設計とダイナミクス解析として、N-Queens問題のN=4~6の問題サイズにおけるネットワーク設計と熱雑音を導入した確率的な数値解析によるダイナミクスの評価を行った。その結果、ネットワークの動作が確認され、ジョセフソン電子回路の固有発振によるネットワークの正解率向上が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に沿った本年度の計画では、主な研究項目として(1)ホップフィールドネットワークを実現するためのニューロン回路の最適化、(2)組合せ最適化問題を解くニューラルネットワークの設計とダイナミクス解析を挙げていた。(1)では、ニューロン回路のパラメータの最適化設計とそれに基づく集積回路での動作検証が達成されている。また(2)では、4~6-Queens問題におけるネットワーク設計とそのダイナミクスの検証を行った。ジョセフソン電子回路特有の効果とダイナミクスの関係には未解明な部分が多いが、ネットワーク動作が確認されている。 これらの結果から、設定した研究実施計画に対しておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果を踏まえ、次年度以降の研究方針として以下の方向に進める予定である。 1. 4-Queen 問題を解くニューラルネットワークの設計・集積化・測定 : 平成24年度の結果に基づき、4-Queen 問題(16ニューロン)のネットワーク・レイアウト設計を行う。レイアウト配置によっては、ニューロン間を接続する配線のインダクタンス値の調整が必要であることが予想されることから、回路パラメータの数値解析へのフィードバックを行い、パラメータマージンの最適化を考慮しながらレイアウト設計を行う。SRLチップファンダリにより集積化を行い、チップ計測を上述のシステムによって実施する。計測では、回路の初期値やバイアス電流の加え方を変更しつつ、統計的な性能評価を行う。 2. 回路パラメータを変化したときのネットワーク性能の評価 : 結合SQUIDの回路パラメータを変化させることによるネットワーク性能の変化がどのように現れるかの調査を行う。特に、結合SQUIDのダンピング抵抗を変化させることで、ジョセフソン電圧発振の振幅を変化させ、系に与える揺らぎの変化がネットワーク性能にどのような変化を与えるかを実測にて調査する。この結果を基に数値解析との比較を行い、ジョセフソン発振のネットワークへの影響の解析と理論付けを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費としては、ジョセフソン素子によるニューロン回路特有の発振特性を検証するために、スペクトラムアナライザを設備備品として購入予定である。また、試作チップの計測に必要な寒剤としての液体ヘリウムや、電子部品、化学薬品を購入する予定である。 旅費は本研究の成果発表として、国内外への学会参加を予定している。 その他、研究成果投稿料などを予定している。
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