研究課題/領域番号 |
24500271
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小野美 武 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70312676)
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キーワード | 感性情報学 / ニューラルネットワーク / 超伝導 / 組合せ最適化問題 |
研究概要 |
本研究では、組合せ最適化問題を解くホップフィールド型ニューラルネットワークを、超伝導デバイスによるニューロン素子で構成し、数値解析と集積回路上での動作から、そのネットワークダイナミクスを解析することを目的としている。 本年度は、(1)ホップフィールドネットワークを実現するためのニューロン回路の最適化として、出力が平坦で電流ゲインの高いしきい値特性を有するニューロン回路の試作・測定を昨年度に引き続き実施した。産業技術総合研究所の超伝導集積回路用試作設備を利用したNb/AlOx/Nb集積回路のレイアウト設計と集積化を行った。ニューロン回路を構成する結合SQUID素子の回路パラメータを、実測によって詳細に抽出することを実施し、数値解析と誤差の少ない入出力特性を得ることに成功した。本素子の利用を想定し、組合せ最適化問題の一つである4-Queens問題を解くネットワークを設計し、数値解析による評価を行った。その結果、時間遅れを伴う自己結合フィードバックによる励振機構を導入したネットワークにおいて、正解率の向上が得られた。(2) 4-Queens問題を解くネットワークのレイアウト設計を行い、チップの試作を実施した。さらに計測を実施したが、ネットワークの完全動作を確認するには到らなかった。これは、試作チップのパラメータ揺らぎや、多ピン計測によるノイズによる誤動作が原因と考えられ、チップ計測系の雑音対策が必要であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画に基づく昨年度の計画では、4-Queens(16ニューロン)問題を解くネットワークの設計と試作、およびその性能評価を主題に据えて研究を実施した。現段階で基本となるニューロン素子のパラメータ精度の高い設計を行い、理想的な閾値特性を得ることに成功している。これを元に4-Queens問題を解くネットワークを設計、試作を行った。試作チップの計測を実施したが、ネットワークの完全動作はまだ達成していない。これは、試作チップのパラメータ揺らぎや、多ピン計測によるノイズによる誤動作が原因と考えられ、チップ計測系の雑音対策を今後進める予定である。 これらの結果から、設定した研究実施計画に対して若干の遅れがあると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえ、本年度の研究方針として以下の内容を予定している。 まずは4-Queens問題を解くネットワークの集積回路上での動作検証を進めることする。耐ノイズ性の高いケーブルの使用やフィルタリング等を導入し、計測系の低雑音化を図る。また、ニューロン素子のパラメータ変更による出力電圧の向上や磁場干渉の少ないレイアウト配置など、チップ上での改良も合わせて行う。 これらによってネットワークの実験的検証が行われた後、回路パラメータを変化させたときのネットワーク性能の評価を行うこととする。具体的には、ジョセフソン電圧発振の振幅を結合SQUID素子のダンピング抵抗を変化させることで変化させ、ネットワーク性能にどのような変化が与えられるかを調査する。また、ニューロ素子へのヒステリシス特性の導入なども検討し、実測を通じた総合的なネットワークの評価を行う方針とする。
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