研究課題/領域番号 |
24500273
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
泰中 啓一 静岡大学, 創造科学技術大学院, 客員教授 (30142227)
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研究分担者 |
守田 智 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (20296750)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生物共生系 / 進化シミュレーション / 生物の調節機能 / 微生物の密度効果 |
研究実績の概要 |
2011年、代表者が責任著者となった共生系ダイナミクスの論文(Iwata et al. Ecological Modelling)は、レフェリーから”great breakthrough”という評価を得た。従来の生態学教科書では、共生系のダイナミクスを記述する適切な方程式が無かった。これが論文によって、歴史上シンプルな形で初めて提示された!この方程式は、生態系のみならず、経営学など多方面での応用力を持っていることが分かってきた。 たとえば、片利共生系への適用:潮間帯の2種の貝類について研究した。潮間帯では多くの生物種が共存をし、互いに複雑な相互作用を行っている。ここで、片利共生関係に着目する。片利共生とは一種のみが利益(協調)を受け、他種は利益も損害も受けない共生関係である。九州大の河合、渡慶次の調査からムール貝(Septifer virgatus)とカメノテ(Capitulum mitella)に片利共生関係があることがわかっている。ムール貝はカメノテがいないと生存出来ないが、カメノテはムール貝がいなくても生存できる。そこで、2種の貝類の片利共生について格子モデル及び格子気体モデルを用いて解析を行った。その結果、片利共生の関係だけでなく、生息空間を取り合う競争関係も生じることが分かった。また、大域的な相互作用の格子気体モデルから平均場理論を用いて基礎方程式を導出し、個体群動態を解析した。この個体群動態の結果は、局所的な相互作用の格子モデルの個体群動態を良く予測出来ることも分かった。一般的には、格子気体モデルの基礎方程式は格子モデルの動態と一致するわけではない。そして、実際の生物種(ムール貝とカメノテ)の空間パターンを、格子モデルのコンピュータシミュレーションが定性的なレベルで再現できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年に、代表者が第一著者または責任著者となっている論文が5編出版された。
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今後の研究の推進方策 |
代表者は、生態学の研究において、生物間の相互作用がローカルに起きると仮定し、「格子ロトカボルテラ模型」(Lattice Lotka Volterra Model)という確率模型を開発した。この論文以来、世界中でたくさんの研究が続き、「格子ロトカボルテラ模型」という一つの分野が形成された。代表者は、20年以上にわたって、この方法(確率セルオートマトン)で、生物進化や複雑系の問題を研究してきた。この方法の利点は、平均場理論(格子気体モデル: Lattice gas model)と対応できるので、単なる空間シミュレーションでなく、しっかりとした数理解析的な基盤を持つことである。 今後もモデリングと格子上のモンテカルロ・シミュレーションによって生物進化および生物の調節機能を研究する。研究代表者は、これまで生物間の相互作用が有限の範囲で起きると仮定し、「格子ロトカボルテラ模型」という格子上の確率模型を開発し、それによって生物の個体群動態や生物進化の問題を研究してきた。具体的な研究方法では、やはりこの格子確率模型を使う。進化では、遺伝アルゴリズムよりずっと単純な進化シミュレーション方法を適用する。また、調節機能の研究では、様々な相転移(群知能)現象を扱う。密度効果の細胞増殖停止因子は、極めて短期間で発現する。その時期を特定するため、シミュレーションが不可欠となっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年9月、オーストラリアでの国際会議(International Conference on Computer Science)に、代表者とドクター学生が出席する予定であった。ドクター学生が欠席したため(シミュレーションが不十分であったため)、旅費が未使用となった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はシミュレーション不足を補うため、現在使用しているパソコンに加え、スペックの高いパソコンを購入したい。未使用額は、その経費としたい。
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