研究課題/領域番号 |
24500283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
上村 龍太郎 東海大学, 情報教育センター, 教授 (80176643)
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研究分担者 |
竹内 晴彦 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 主任研究員 (00357401)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニューラルネットワーク / 自己組織化マップ / 競合学習 / 内部表現 / 相互情報量 / 変数選択 / クラス構造 / 重要性分析 |
研究概要 |
情報論的自己組織化マップの目標をデータの出来るだけ忠実な表現を目指すことから、多様な目的に開かれた表現の研究へと変換することを研究の目標とした. 平成24年度は、研究の基盤となる2つの技術の実現を目標とした。すなわち、単純化を重視した重要性研究とニューロンの社会化の研究である. まず、単純化の研究,特に構成要素の重要性の研究である.これはニューラルネットワークの構成要素がどれだけ情報量の獲得に寄与するかを測定することによる重要性の研究である。平成24年度は,構成要素の中で,入力ニューロンを取り上げ,入力ニューロンの重要性を考えた.具体的には,入力ニューロンの重要性を入力ニューロンの発火の度合いによって定義した.ニューロンの発火は,競合層における勝者ニューロンとの距離によって決定される.距離が小さくなるほど発火率が高くなる.この入力ニューロンの発火率により入力ニューロンの持つ情報量を計算し,この情報を増加させるとどのような変化が起こるかを検証した.入力ニューロンの持つ情報量を増加させることにより,より少数の入力ニューロンだけが使用されるようになる.このとき忠実に入力パターンを近似出来ることがわかった.この研究は変数の選択の問題とも関係していることもわかった. 次に,ニューロンの社会化の研究である.ニューロン集団としての性質と各ニューロンの持つ独自の性質を分離することに成功した.この分離によって集団としてのニューロンと個別ニューロンの間の関係を定量化することが可能となった.特に自己組織化マップのクラス構造の明確化の問題に応用した.個別ニューロンと集団ニューロンの間の関係を適切に取れば,クラス構造を明確にすることが理解できた.さらにこのニューロンの社会性とニューロン構成要素の重要性を結合する研究を行なった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、忠実な表現から開かれた表現(open representation)への変換であリ,多様な表現を生み出す基礎技術を確立し,ニューロンの社会化の問題を探求する研究である。 研究は,平成24年度と25年度に基礎的な技術を確立し,平成26年度にニューロンの社会性を考慮したモデルへと展開する予定であった.しかし,基礎的な技術であったニューラルネットワークの構成要素の分析の研究が進み,実用化の段階に近づいて来た.平成24年度は,この重要性分析をより単純化し,さらに理解しやすい形にする研究をおこなうことができた.まだ大規模なデータでこの重要性分析がどの程度有効であるかを検証することが残っている.しかし,研究の基礎部分はかなり実用化に近づいたと考える. 基礎技術の研究が進んだため,最終的な目標であったニューロンの社会性の問題を考慮したニューロンのモデルを作りはじめることができた.社会化では,まずニューロンの集団としての性格と個別の性格を分離し,この二つの間の関係を調整することによってどのような自己組織化が可能であるかを実験することできるようになった. ニューロンのモデル化を越えて,人間社会の集団と個人の問題にも対応できるようになったと考える.すなわち,人間社会の自己組織化の問題に応用し社会集団のモデル化をすることができると考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は次の三つの方向で研究を進める.すなわち,基礎技術の実用化向け研究と応用研究,およびニューロンの社会化である. まず基礎技術のニューロンの構成要素の分析については,入力ニューロンの重要性を分析する方法はすでに実用段階に入っている.この重要性分析をさらに単純化し,理解しやすい形へ変換する研究を行なう.また,重要性分析を自己組織化マップに組み込み,構成要素の重要性を考慮した自己組織化の可能性を探求する.これらの研究は重要性分析の手法を普及させるために必要な研究である. 次に,重要度分析の大規模なデータへの応用である.すなわち,分析手法が大規模なデータにおいても有効であるかどうか検証する.データとしては,マーケティング,ウェブページの分類などのデータを収集する.大規模なデータにどの程度有効性があるかを確認する作業に入っていく.とくに大規模なデータについて構成要素の重要性分析の結果が解釈できるかどうかを詳しく調べることにする. ニューロンの社会性の研究では,集団性と個別の性格を分離することが可能となっており,この間の関係を分析する段階に達している.そこで,ニューロンの持つ集団としての性格と個別の性格の関係の強さを設定する方法を確立する.また関係の強さを変化させることによってニューロンはどのような自己組織化を行なうかを検証する.また重要性分析の方法により個別ニューロンの重要性を考慮すると個別ニューロンと集団ニューロンの関係がどのように変化していくかを検証する,
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は,手法の実用化に向けて,開発環境の整備と成果の発表を中心として使用する予定である. まず,開発環境の整備に向けて研究費を使用する.基盤技術のなかで重要性分析についてはかなり実用化の段階に達している.これをできるだけ大規模なデータ解析に応用する予定である.このため現在の情報環境を改善し,より高速な処理システムに変更する必要がある. 次に,研究成果の発表のために研究費を使用する.研究を促進するためには世界中の研究者との交流が必要不可欠となる.このためには,研究成果をできるだけすみやかに発表する必要がある.そこで国際会議で発表するために研究費を重点的に使用する.
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