研究課題/領域番号 |
24500285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 愛知工業大学 |
研究代表者 |
石井 直宏 愛知工業大学, 情報科学部, 教授 (50004619)
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研究分担者 |
鳥居 一平 愛知工業大学, 情報科学部, 准教授 (50454327)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非対称ニューラル / 非対称構造の回路 / 非線形性の回路 / ウィーナ核 / ベクトルの生成 / ベクトル場の生成 |
研究概要 |
非対称構造を持つ神経系ネットワークが動きの刺激入力に対して、その方向性と動きの速さに対して、敏感であることを計算論から導き出してきた。本研究では網膜、視覚系大脳皮質V1野、MT野などにみられるミクロなネットワークに、これらの各々部位の基本構造とみなされる非対称性でかつ非線形性の回路構造がV1野での動きに対するベクトルの生成、MT野での冗長性を有した、より強いベクトルの生成、そしてMT野に続くMST野でのベクトル場の生成を、これらの構造と新たに展開する方法論から、計算論的に明らかにすることである。はじめ、非対称構造のニューラルネットワークがその非対称性を特徴つける、非線形性の2乗特性にある。この2乗特性が、米国のStanford大学のHeegarらにより、V1野および MT野において、片側整流の2乗非対称性あらわされることを示した。これにNormalization Circuit(正規化回路)の飽和特性を取り入れて、本研究では、これらの結果を非線形のsigmoid関数に置き換えて、解析を進めた。さらに、英国ロンドン大学のBeck,J.M.らのMT野に適用できる正規化回路(Normalization Circuit)の展開がベクトルの内積の作用に展開できることを示した。このベクトルの内積により、ベクトル場の生成に有効であることを示した。ベクトルの内積により、Optic flowの検出に適用可能な基本的な検討を示した、次に、ベクトル内積を線積分に適用することにより、ベクトルの回転(Rotation)が示される。これにより、MT野でのベクトルの回転の生成とMST野への関連を示した。以上のように、Normalization Circuitのベクトル内積がベクトル場の生成に有効であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視覚系の動きに対する刺激入力が非対称構造を持つニューラルネットワークで、どのように捉えられるかについて、今まで研究を進めて来たが、神経回路でベクトルとして、捉えられるのか、最初に検討した課題であった。この非対称構造の回路は非線形性を非対称に含む回路であることから、Wienerのカーネル(核)関数での表現が有効となることを示してきた。動きの刺激に対する回路の動作が、この核関数でベクトルとして表現できることを示した。この非対称構造の神経回路がヒトなどの高等生物の視覚系の大脳皮質のV1野、MT野などのStanford大学のProf. Heegerらのモデルの基本回路として埋め込まれているものと解釈できることを示してきた。そこで、本研究ではベクトルの強さがV1野よりも MT野でより強くなることを計算論的に示し、生成されたベクトル間の作用を明らかにしたかった。このベクトルの作用とは別にロンドン大学のBeckらにより、Normalization Circuitの一般的な性質として取り上げられ、研究されてきた。このNormalization Circuitの働きはベクトルの内積の作用とも、見なせることから、動きのベクトルの追跡について検討してきた。さらに、ベクトル間の作用はベクトル場の生成に関わることから、検討してきた。ベクトルの内積はベクトルの線積分が可能となり、Stokesの定理によりベクトルの回転の場の生成に関わることを示した。これらの結果は、目標に達したわけではないので。残された課題もあるが、目標とした研究をある程度進めたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
非対称構造の神経回路の動きの刺激に対してのベクトルの生成、さらには非対称構造の回路に接続するNormalization Circuiがベクトルの内積の作用のあることにつながり、ベクトルの内積から、ベクトルの線積分につながることを示してきた。今まで、非対称構造の回路の静的状態,振る舞いを課題に取り上げてきたが、今回からの課題として、非対称構造の回路の動的状態、振る舞いについて明らかにして行きたい。はじめに、ベクトル生成による内積作用の計算論的な評価を行う。次に内積の一般化した線積分がベクトルの回転場の生成につながることを計算論的に詰めて行きたい。従来、視覚系の大脳皮質のMT野およびそれにつながる MST野での回転ベクトルの存在が神経科学の分野で明らかにされて来ており、本研究は非対称構造の回路から出発して、大脳皮質のV1野、MT野およびMST野でのベクトル生成とこれらのベクトル場の生成を計算論的に明らかにすることと、それをシミュレーションで示すことである。ベクトルの生成の不確実性についても、シミュレーションから、それらの状態を示したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は非対称構造の回路の静的状態、振る舞いの計算論的な解析から出発してきたが、本研究の次のステップとして、大脳皮質のV1野、MT野およびMST野での動的状態、振る舞いのベクトル生成とこれらのベクトル場の生成を計算論的に明らかにすることと、それをシミュレーションで示すことである。ベクトルの生成の不確実性についても、シミュレーションから、それらの状態を示したい。ここでのシミュレーションは神経回路の層構造を反映させなければならない。シミュレーションのための大容量データの保存と変換を効率よく行うため、やや規模の大きいシュミレーションのシステムの構築をしたい。このため、高速、大容量のハードディスクを取り入れたシュミレーション実施のための実験装置の再構築の費用および改良していく費用にしたい。さらにシミュレーション.ソフトウエアとしてMatlabの一部利用も取り入れたい。これらのシミュレーションのための実験システムの再構築、改良費用および研究成果の国際会議での発表のための諸費用と国際Journalへの投稿、印刷費用としたい。
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