研究実績の概要 |
非対称構造を持つ神経系ネットワークが、動きの刺激の入力情報となる方向性と動きの速さに対して、敏感であることを計算論から導き出してきた。本研究では網膜、視覚系大脳皮質V1 野、MT 野などに見られるミクロなネットワークであるが、共通の基本構造と見なされる非対称性でかつ非線形性の回路構造がV1 野での動きに対するベクトルの生成、MT 野での冗長性を有した、より強いベクトルの生成と近傍を考慮したベクトル間の関係、そして、MT 野に続くMST 野でのベクトル場の生成を、非対称回路の構造と新たに展開する方法論から明らかにすることである。そこで、本研究では、はじめに、catfishの網膜の非対称構造に注目して、方向性の刺激に対して、ベクトル生成の基本的な計算を示した。次に、その動きの方向性をとらえるベクトルの生成を非線形性を持つ非対称性回路に拡張して、一般的な非線形性の持つ回路の特徴として、明らかにした。さらに、この非対称性構造の回路での非線形性の機能の役割を示した。この非対称構造の回路に注目して、大脳皮質のV1野、それに続くMT野およびMST野でのベクトル生成を論じた。ここでは、大脳皮質のV1層、引き続くMT層で、そのベクトル形成が多くなることを計算論的に示した。さらに、MST野でのベクトル場の生成の手がかりとして、英国のDr.J.Beckらの神経回路のCoordinate Transform Theory(2011)のベクトルの内積から、新たに回転ベクトルの導出を示した。これらの成果はSpringer出版のLNCS(vol.7824,2013),および国際誌のIJSI,IGIGlobal,USA.2013,およびProc.IEEE/SNPD(2013)に掲載した。
|