研究課題/領域番号 |
24500301
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研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
石田 和成 広島工業大学, 情報学部, 准教授 (20303026)
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キーワード | 地域情報化 / 近距離無線通信 / 機器間通信 / センサネットワーク |
研究概要 |
安価な近距離無線通信とセンサを利用し,階層的な地域情報化システムの試作を行った.本システムは,機器間(M2M:machine to machine)通信と地域社会における人や乗り物の移動を組み合わせ,地域情報を収集する局所的な無線センサーネットワークの間欠的なインターネット接続を行う. 通信システムは4階層で構成される.第1層はデータ収集を目的としたSensor Nodeを配置する.単純なセンサデータの収集は,近距離無線通信機器(ZigBee),センサの制御やデータ処理が必要な場合はマイコン(Arduino)を用いる.第2層は,第1層の複数のSensor Nodeから得られたデータを記録するRecording Nodeを配置する.第3層は,複数の第2層のRecording Nodeからデータ収集を行うTransporting Nodeを配置する.Transporting Nodeは,移動する人や乗り物に設置し,データ発信源(Recording Node)周辺で自動的なデータ収集を行い,次に説明する第4層へのデータ転送を行う.第4層はインターネットへのゲートウェイを配置し,複数の第3層のTransporting Nodeが登録したデータをインターネットで公開する.インターネットへのゲートウェイは、常時接続のある施設に設置する. 本システムは,各種センサと機器間通信,そして人や乗り物の移動にもとづき,地域情報を収集し,必要に応じてインターネット上で公開する.本システムは,3G,LTEなどの移動体通信を用いないため,時間的な遅延が許容される情報について安価な転送方法となる.そのため、ソーシャルメディアにおいて情報発信量の少ない大都市圏以外の地域における情報発信を促進する一手段を提供する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に実施した,課題1「位置情報データの収集とデータベース構築」,課題2「情報発信の地理的,時間的パターンの分析」により,大都市圏と比較し,地方における情報発信が非常に少ないことを定量的に確認した.これは,人口密度や通信インフラの格差によるものである.そのため,ソーシャルメディアによる自律的な情報発信のみでは,大都市圏以外における情報発信の増大は期待できない.人口,通信基盤の偏りにより,人口密集地へのデータの偏りは不可避である.遠隔地の情報発信を促進するためには,従来の通信基盤によらない新たな仕組みが必要となる. 地方における情報発信を促進するために,人口や通信インフラに依存しない情報発信の仕組みとして,平成25年度において,安価な近距離無線通信を利用した,階層的な地域情報化システムの試作を行った.大都市圏外においては,インターネットの接続範囲外の地域が少なからず存在する.本システムでは,これらの地域における情報転送において,近距離無線通信と地域を移動する人や乗り物を利用し,インターネットと接続外地域との間で情報転送を行う.本システムは時間的な遅延が許容される情報について安価な転送方法を提供する. そのため,当初予定していた、課題3「同義語および同音異義語の判別手法の活用」、課題4「地域情報分析システムの構築」、課題5「携帯端末を用いたコンテンツ生成,編集,公開システム」は,適宜内容を見直し,平成26年度に実施することとした.
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今後の研究の推進方策 |
次の3つの課題3,4,5について実施する. 研究課題3「同義語および同音異義語の判別手法の活用」:ウィキペディアを用いた,同義語および同音異義語の判別手法を用いて,地域間の用語用法の関連を抽出し,地域情報分析システムに導入する. 研究課題4「地域情報分析システムの構築」:収集蓄積したデータや,抽出,分類した地域,時間的パターンを閲覧,分析できるシステムを開発する. 抽出した話題を多様な側面から閲覧できるように,情報閲覧方法として,キーワード,話題共有グループ,期間,地域にもとづくデータ閲覧の仕組みを開発する. 研究課題5「携帯端末を用いたコンテンツ生成,編集,公開システム」:この課題については,当初,GPS付き携帯端末を用いた地域情報提示システム,位置情報および経路記録システムの開発を主として予定していた.しかし,平成24~25年に試作,商店街の方々の試用により,人口密度の低い地域の商店街では,利用範囲も限られているため,来場した来客が能動的にシステムを利用する頻度は少ないことが分かった.そのため,携帯端末による位置情報および経路記録システムの代わりに,商店街にセンサーを配置することにより,来場状況の記録,配信を行うシステムを併せて開発することとした.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究実施内容の修正に伴い,購入物品の変更の結果,次年度使用額が生じた. 平成26年度の研究実施内容も修正予定のため,その際の物品購入に充てる.
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