研究課題/領域番号 |
24500304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂田 邦子 東北大学, 情報科学研究科, 講師 (90376608)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | メディア / サバルタン / 東日本大震災 |
研究概要 |
東日本大震災直後および1年後までの震災報道に関するテレビ局(被災3県と東京キー局およびNHK)への聞き取り調査とテレビ番組の分析を行った結果、報道される地域に偏りがあったことが明らかになり、地域レベルでサバルタニティが起こっていたことが明らかになった。また、このようにメディアが報道する地域に偏りが生じた原因が明らかになった。 さらに、著しく報道量の少なかった地域の視聴者(宮城県山元町の仮設住民)に対する意識調査としてアンケート調査を行った結果、地域住民のメディアに対する不信感や不満とともに、報道されなかった実態があることが明らかになり、実際に地域住民が伝えてほしかったことが何だったのか、彼らが何を抱えていたのか、ということが(部分的にではあるが)明らかになった。 理論面では、「サバルタン・サバルタニティ」という言葉の再定義を行い、先行研究においては、「サバルタン」という人あるいは集団を既存の存在として捉えていたのに対し、「サバルタン」と「マイノリティ」という概念の差異化を図り、「サバルタニティ」という概念が文脈や言説の関係性において生じるものであることを東日本大震災の事例を根拠に論じた。 さらに、マスメディアで報道されている被災地の様子とは異なる視点から被災者やボランティアを行う被災地の人びとへのインタビューを行い、映像として残すことで、次年度以降の調査のデータとして使用するとともに、アーカイブ化し、後世に残すことのできる記録を収めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の仮説を立てるまでのデータは思った以上に早くそろったが、まだそれらを分析する時間が取れていない。データの収集と分析が同時進行で進んではいないことが多少心残りではあるが、進捗としては悪くはないスピードであると考える。 また、津波被災地でのアンケートやインタビューによる調査はもう少し時間が経ってからと考えていたが、偶然つながりができ、意外に早く実現した。一方で、その結果も含め、被災地の実態から、実践研究の方が部分的に沿岸部では実現できずにいる。もしかしたら、この3年間で沿岸部で何らかの実践的試みを起こすことは難しいかもしれないと考えている。 ただし、撮りためた映像によるインタビューからも多くのことが明らかになる可能性があるように思われる。今後そのあたりのバランスを取りながら進めていくことができれば、今年度の試みはひとまず必要な段階までは進んでいるように感じている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、さらに多くの地域で、メディアとサバルタニティに関する調査を行うとともに、地域ごとの背景や文脈を考慮しながらサバルタニティの創出に関する研究を進めていきたい。 同時に、これまで撮りためた映像などのデータの分析を進め、より多面的にサバルタニティの実態を把握したいと考えている。 そのうえで、当初より予定していた実践研究のデザインを進め、サバルタンの発話の可能性について考察する機会を探りたいと考えている。 具体的には、データ分析の継続、被災地における聞き取り調査および実践研究を行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度、実践研究の方の進捗が遅れた(というよりは、被災地の実態に鑑みて実施できなかった)ことにより、大幅に予算が執行できずに繰り越してしまった。次年度は、やはり実践研究を実現させる方向で準備を行うとともに、これまでの成果をもっと多くの場所で発表していきたいと考えている。
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