研究課題/領域番号 |
24500311
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
橋本 文彦 大阪市立大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (30275234)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マルチモーダル / 情報処理能力 / 意思決定 / 誤操作防止 / 実験経済学 |
研究概要 |
本研究の目的は、第一にさまざまな感覚からの情報が与えられた際に、人間がどのようなプロセスとメカニズムで意思決定を行い、その結果としてどのような操作行動が行われるのかを解き明かすことであり、第二に上記のような人間のマルチモーダル情報処理能力の特性を利用して、「誤操作・誤入力」を防止するためのシステムを研究することである。 本年度は、上記の目的を達成するための第一段階として先行研究によって得られている脳機能研究の成果と、本研究者がこれまでに取り組んできたクロスモーダル・アテンショナルブリンクの結果について、「情報処理⇒意思決定⇒行動」というプロセスの再解釈をおこなった。 第二段階として、マルチモーダルな情報を被験者に与えるために、嗅覚刺激提示装置と触覚刺激提示装置を自作した。嗅覚刺激提示装置は、ほぼ製作前の意図通りのものが完成した。ただ、動作時の音がやや大きく(実験時には、ヘッドフォンによってこの音を遮断した)、またある香りを与えた後の装置内にその香りがわずかに残ることがあるために、今後、異なる香りを与える際の対処が必要である。触覚刺激提示装置は、通常の振動刺激を3msecの精度で制御できたことに加えて、ペルチェ素子を用いることで冷温の刺激を実現した。 本年度の第三段階では、上述の装置を用いて47名の被験者に対して、それぞれの感覚への単独での刺激提示の場合と、単純な組み合わせを用いて、被験者が判断を間違え始める「ベースライン」を測定した。今年度当初計画した実験条件では、嗅覚刺激と視覚刺激、触覚刺激に対して、聴覚刺激の課題がやや難しすぎたために、聴覚刺激の課題を当初よりもやや易しいものに変更することで、感覚間の正答率(=ベースライン)をそろえることができた。 本年度の成果は、全体にはまだ途上であるが、ここまでの実験成果を2013年度の国際学会棟で報告するために投稿を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で示したように、嗅覚刺激提示装置と触覚刺激提示装置をほぼ完成し、これを用いて被験者実験を予定通りに行った。その結果は国際学会に投稿済みである。 触覚刺激提示装置は、振動刺激については当初の予定よりもやや高い精度の3msec程度の精度でコントロール可能で、また冷温刺激も実験条件に組み入れることができた。嗅覚刺激提示装置は、動作音の低減と複数の香りの分離が課題として残っている。 マルチモーダル情報処理モデルの再解釈そのものは、実験結果ともセットであるために、「完成した」ということはできないが、次年度以降の実験計画に反映される見込みである。 また、本年度の実験開始前には、本学本研究科内に設置された「倫理審査委員会」において、本実験計画について承認を受けた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、各感覚を単独あるいは単純な組み合わせで被験者に提示し、そのベースライン設定を行ったが、次年度は、現実場面を想定して、より複雑な組み合わせでの提示を行ったり、また、提示する刺激と被験者が反応する刺激を異なったものとする(たとえば視覚刺激ととも嗅覚刺激を提示し、触覚刺激を与えながら視覚刺激での再生を促すなど)ことで、複数の感覚が脳内でどのように統合(あるいは並列)処理されているのかを調べていく。 このために、必要な刺激装置の改良と、あらたな被験者実験を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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