研究課題/領域番号 |
24500312
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
永田 好克 大阪市立大学, 大学院創造都市研究科, 准教授 (70208023)
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キーワード | タイ東北部 / デジタル地名辞書 |
研究概要 |
本年度は昭和初期から昭和中期にかけて発刊された古い資料におけるタイの地名のデジタルデータ化を行い、地名履歴のデータベースの内容を充実させることを主に進めた。用いた資料は戦中期に日本で発刊された地名辞典および米国で発刊されたタイ地名一覧、約半世紀前に米国で発刊されたタイ地名一覧である。これらから得た約13万件の地名エントリーについて、別名や別表記を整理し、また記録に残る経緯度の精度や齟齬の有無を点検してきた。本研究課題では東北タイの農村地名を主対象としているが、前述3件の資料はタイ全国の地名を収録したものであり、東北タイの農村に該当するもののみ抜き出してデジタルデータ化を行うと作業効率を悪くすることから、地域や属性を区別せずに入力を進めた。これらの資料はいずれも地名表記がタイ文字でなくローマ字翻字されたものである。当初はタイ文字表記に戻すことを予定していたが、翻字からタイ文字に戻すにあたって、経験値をもとにして一定のルール化を行うことは可能であるものの、高い精度は期待できないと判断した。データのデジタル資源共有化にあたってRDFを用いる手法などが進展してきていること、位置座標をキーにすればタイ文字表記のデータとの突合せが可能となること、ローマ字翻字における表記の揺れの特徴を解明することも目的のひとつであることから、原典の表記を尊重することとした。以上の進捗状況について、HGIS研究会で報告を行い、関連資料の所在についての助言を得た。 また東北タイの農村地名の背景を探求することを目的としてナコーンパノム県内の一部で地名の由来に関する現地調査を行った。分析は現在進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
定量的、定性的に表記の揺れを分析するための地名データの入力はひととおり終えたが、入力データ済みデータの表記や経緯度のスクリーニングを経る必要があり、工夫をこらしながら進めているがやや手間取っている。また、農村地名の背景を探求する現地調査を年度末頃に再度行いたいと考えていたが、タイでの政治混乱の状況から見送ってきたため、定性的な分析のための情報を補充することができなかった。一方で、研究計画時には存在を知らなかったまとまった量のデータを入手することができたため、地名の履歴を検討するにあたって時間軸の幅を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
入力済みの地名データのスクリーニング作業を進め、地理空間軸、時間軸での統合化をはかる。また戦中期の地名データについては、関連資料の存在についての助言を得たことから、これらと合わせた地名データの精度向上や件数充実をはかりたい。農村地名の背景を探求する現地調査についても、タイの内政状況をみながら機会を設けて実施し、定性的な分析の資料を充実させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
2月あるいは3月に、農村地名の背景を探求する現地調査をタイで実施したいと考えていたが、タイでの政治混乱に伴う不測の事件事故が発生する範囲が首都圏で拡大していたため、現地調査のための渡航を見送った。そのために次年度使用額の大半が発生した。また謝金についても年度当初の計画よりも実績が少なくなったためである。 資料整理のための謝金、現地調査のための経費、補充資料の閲覧や入手のための経費として、次年度に有効に活用したい。
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