「5~10年程度の中長期的視点で、地域における関連主体のソーシャルメディア活用状況の変化と、ネットワークガバナンスの変容、およびそれらの関係を明らかにする」という目的の下、研究の基礎情報となる地域ソーシャルメディアの全体的な動向を把握する調査を年次で行った。成果は国内全地域SNSリスト、地方自治体によるFacebookページリストとしてウェブ公開した。
本研究の柱である静岡県掛川市・千葉県千葉市・福島県会津若松市の事例研究については、町丁別人口動態調査、先行研究論文リスト作成と収集、現地訪問による関係者へのインタビュー調査を複数回行った。各地域にはそれぞれ、地域関連の小集団活動やコミュニティビジネスの起業といった新たな取組みを支援する人的ネットワークが存在し、その中で有形無形の金銭支援に近いことが行われていることも示唆された。その背景には各地域における祭りと町内会の関わり、私塾・藩校・結社等の歴史や先人の議論(掛川における報徳思想等)等、社会関係資本や文化資源が関連している。これらの成果をまとめた論文は2015年度発行の雑誌に掲載予定である。
また各地の取組みの中長期的変化をたどる中で、新たな研究課題も浮上した。近年、オープンガバメント政策を進める地方自治体が世界的に増加し、日本でも「シビックテック」と呼ばれる地域の草の根の活動等が進展しているが、国内における当該取組みには、もともと地域SNSを運営していた者が転じている事例が多数含まれている。こうした取組みの歴史的経緯への位置づけ、現在のネットワークガバナンスにおける位置づけ、またヒト・カネ・情報等の資源調達の課題をどう解いていくかといった点は本研究との接続が有益であろう。
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