研究課題/領域番号 |
24500316
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研究機関 | 岐阜女子大学 |
研究代表者 |
住谷 芳幸 岐阜女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (50179305)
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キーワード | 中国文学 / 抄物 / 清原宣賢 |
研究概要 |
室町時代後期に、清原宣賢によって書かれた漢文『蒙求』についての注釈書である各種の抄物について、それらの引用関係を明らかにすることで、清原宣賢の学問のあり方、さらにそれにより当時の学問のあり方を解明することが、この研究の目的である。 清原宣賢が作成した慶應義塾図書館蔵『蒙求聴塵』に引用された原漢文を確認することは、『蒙求聴塵』の成立を考える上で重要である。そのため、すでに入力した京都大学付属図書館清家文庫蔵『蒙求』(頭書本)との対照を行った。さらに清家文庫蔵『蒙求』(無奥書)のデータ化を行い、この『蒙求』(無奥書)との対照も行った。その結果、『蒙求聴塵』と『蒙求』二種とでは異なる部分がいくつも見出された。この事から、『蒙求聴塵』は清家文庫蔵本『蒙求』二種を直接参照した可能性の低いことが判明した。この事は、清家文庫蔵『蒙求』(頭書本)の書き入れなどをもとに『蒙求聴塵』が成立したとする従来の考え方が、誤りであることを示している。さらに、漢文と抄物との引用関係の解明は、抄物の成立を考える上で有効な作業であることも確認できた。これについては「慶應義塾図書館蔵『蒙求聴塵』について」(岐阜女子大学紀要第43号)で報告した。 平成24年度に作成した古注本『蒙求』数種については、その対照本文を作成し、インターネット上に公開した。また、上記の清家文庫蔵『蒙求』(無奥書)の本文データ、および『蒙求』(頭書本)対『蒙求』(無奥書)の対照本文データについては、今後インターネット上での公開を予定している。 京都大学図書館清家文庫蔵『史記抄』は、その画像がインターネット上に公開されているが電子化データはない。そこで平成24年度・25年度と、『史記抄』のデータ化を行っている。平成25年度では全20冊の第一次データの作成を完了した。なお、作成のデータについては、整理が出来しだいインターネット上での公開を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慶應義塾図書館蔵『蒙求聴塵』本文との対照を行うことを目的として、京都大学付属図書館清家文庫蔵『蒙求』(無奥書)本文のデータ化を行った。さらに、清家文庫蔵『蒙求』(頭書本)対清家文庫蔵『蒙求』(無奥書)の対照本文データの作成を行った。また、平成24年度作成の古注本『蒙求』数種の対照本文を作成し、インターネット上に公開した。これら各種『蒙求』の本文データの作成は、申請時には予定していなかったことであるが、漢文と抄物との引用関係の解明が、抄物の成立を考える上で有効な作業であると考え、計画の変更を行った。この変更により京都大学文学部国語国文研究室蔵『蒙求抄』書き入れ注記のデータ化については、平成26年度以降に再度変更した。 平成25年度中に行った京都大学附属図書館清家文庫蔵『史記抄』のデータ化は、20冊分の第一次データの作成を完了した。これは当初の予定より進んでおり、平成26年度中には全データをインターネット上に公開できそうである。 以上、研究計画に変更のあったものの、変更後の進展はおおむね順調に進行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度・平成25年度に引き続き、各種『蒙求』の本文データを作成する。それらと古注本『蒙求』等との対照本文データを作成する。これらの対照本文と各種『蒙求抄』(特に蓬左文庫蔵『蒙求抄』)との引用関係を解明することで、その資料的な性格を明らかにしたい。 平成25年度に作成した京都大学附属図書館清家文庫蔵『史記抄』の第一次データの確認・整理を行い、平成26年度中にインターネット上での公開を目指す。 計画の変更を行った京都大学文学部国語国文研究室蔵『蒙求抄』書き入れ注記のデータ化を行う。可能であれば、この書き入れ注記と各種『蒙求抄』本文との対照を予定している。
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