研究課題/領域番号 |
24500320
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
松岡 和生 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (50209508)
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研究分担者 |
山口 浩 岩手大学, 人文社会科学部, 教授 (20174625)
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キーワード | 直観像 / 脳機能イメージング / NIRS / fMRI / 脳波 |
研究概要 |
1.前年度に引き続き、大学生を対象とした質問票による集団スクリーニングと実験室における標準的直観像検出検査を実施し、新たに3名の大学生の直観像素質者を見出した。実験及び面接では、直観像の現象的特徴、直観像素質者の日常生活におけるイメージ経験に関するデータを収集した。イメージ能力質問紙(鮮明性、物体・空間イメージ能力、空想傾性、日常イメージ体験等)のデータに基づき、素質者の特徴を非素質者の集団と比較したところ、素質者は視覚イメージ鮮明度、空想傾性、物体イメージ能力のいずれにおいても強い特性を有しており、日常生活におけるイメージ体験が極めて豊かであることが確認された。これらの研究成果はH.26年に関連学会および論文にて発表予定である。 2.直観像素質者のイメージ想起時の脳活動の特性を遠赤外線分光法(NIRS)を用いて検討した。その結果、直観像素質者群では,イメージ想起課題時において,前頭前野と後頭葉視覚領の活動が相対的に活発になることが示唆された。また、素質者の一部に見られたイメージ想起時の左視覚領の顕著な賦活は,直観像素質者の脳活動の特徴を示している可能性があり,注目された。この研究成果は平成25年日本イメージ心理学会第14回大会で発表された。 3.直観像素質者の脳活動の特異性を検討するために、fMRI装置を用いた直観像喚起時の脳活動の計測を実施した(継続中)。ターゲット部位はV1、紡錘状回顔領域(FFA)および海馬傍場所領域(PPA)である。現在、データの解析中であるが、直観像喚起時において、特にFFA部位の活動に顕著な賦活を示唆するデータを得ている。この研究成果については、H.26年開催の関連学会および論文に発表する予定である。 4.認知心理学の専門書における心的イメージの章を執筆し、本研究に関連するイメージの脳内情報処理機構を含む最新のイメージ研究について紹介、解説した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に引き続き、直観像スクリーニング検査による新たな直観像素質者の検出、光トポグラフィ(NIRS)による直観像素質者の脳活動の計測実験を実施し、いくつかの興味深い研究知見を得ることができた。当初、利用を予定していた岩手医科大学の3テスラ機が故障のため稼働不能となり、同大に設置の最新型MRI7テスラ機の利用に関しては、当該研究の計測には必ずしも適していないところがあり、先方との調整も進んでいない状況にあった。このため、一時、研究の進展が危惧されたが、東北福祉大学感性福祉研究所の協力を得ることができ、26年3月からは、3テスラfMRI装置による撮像実験が可能となった。現在、直観像素質者および統制群の被験者の撮像実験を実施中である。脳波計測のデータは未だ得られていないが、26年度9月から実施する予定になっている。 以上から、本研究は、研究計画にしたがっておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、下記のように研究を推進していく。 (1)fMRIによる直観像喚起時における脳特定部位の関与の検証:25年度に引き続き、直観像喚起時の脳活動を測定する。最終年は、V1, FFA, PPAといった視覚情報処理領域のほかに、IPS領域、後帯状回、海馬近傍についてもROI分析を実施する。これらの特定部位の関与に絞って順次、検証を進めていく。 (2)EEGによる直観像喚起時の脳活動の測定を実施し、直観像喚起時の脳波データを脳波トポグラフィにより解析し、脳波活動の観点から、直観像喚起時の脳活動の特徴を検討する。またNIRSと脳波の同時計測によるデータ収集を試み、脳血流と神経活動との両面からの直観像の脳内過程について検討する。 (3)今回、得られた研究データに基づいて、視覚的直観像の脳内情報処理機構に関する理論モデルを構築する。 (4)個別の研究成果を関連学会および関連学術雑誌へ発表するとともに、研究期間に得られた研究成果を総括する。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入した物品の価格が当初の予定額を下回ったため。 最終年度にあたる26年度の科研費の使用計画は以下の通りである。第一に、東北福祉大学感性福祉研究所のfMRI装置を用いた実験を行うための研究代表者と実験協力者の仙台往復の旅費および実験協力者に対する謝金、また岩手大学で実施する光トポグラフィおよび脳波計装置を用いた実験研究の研究協力者謝金として使用する。第二に、実験研究における刺激作成、データ解析及び研究結果の記録に必要な物品を購入する。第三に、研究成果発表および情報収集のために参加する学術学会の旅費に使用する。最後に、本研究成果をまとめるための印刷費、論文投稿等に使用する予定である。
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