研究課題/領域番号 |
24500324
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 沼津工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宮下 真信 沼津工業高等専門学校, 制御情報工学科, 准教授 (20443038)
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研究分担者 |
田中 繁 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (70281706)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 視知覚 / 方位マップ / 第一次視覚野 / 神経デコーディング / 自己組織化 / 視覚経験 |
研究概要 |
これまでに、単一方位の視覚刺激を与えてネコを育てると、経験した方位に応答する細胞が優位に増加する方位の過剰表現がおこることが報告されてきた。この方位の過剰表現は生後4週齢で最大となり8週齢以降は起こらないことがわかっている。また。単一方位の視覚経験後のリカバー実験では感受期初期ほどリカバーがし難く、6週齢以降の後期ではほぼ正常な状態に戻ることが知られている。しかしながら、感受期の終焉が起こることやリカバーに2つのフェーズがあるメカニズムについては不明な点が残っている。ここでは、視床の神経細胞から視覚野入力層間に、神経ネットワークの自己組織化数理モデルを適用しシミュレーションをおこなった。その結果、実験と同様の感受曲線が再現され、正常飼育によって神経細胞の方位選択性が向上すると、最適方位以外の刺激に対する応答が低くなり、影響が低減されてゆくことが感受期を決めていると予測された。また、感受期の各週齢に相当するシミュレーションステップごとの結果に対して、正常飼育に戻した場合のシミュレーションをおこなった。その結果、生理実験と同様に6週齢に相当する時期の前では単一方位の視覚経験の効果が残るのに対し、この時期の後では方位マップの構造がほぼ正常にリカバーされることが再現された。リカバーが2つのフェーズに分かれることは、感受期前半では経験した方位にのみ応答するように神経ネットワークが作り変えられるのに対し、後半では視床から視覚野入力層の神経結合に元々の方位特性も表現するための痕跡が残っていることが原因であると予測された。これらの成果をまとめて国内学会、国際学会で発表をした。さらに、視覚野の単純型細胞の応答特性を使って網膜への投影画像を予測するデコーディング数理モデルを構築した。正常飼育と単一方位の視覚経験のシミュレーションで得られた方位マップに適用し、数理モデルの有効性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の目標である、発達期の視覚経験によって、大脳視覚野に見られる方位マップがどのように改編されるのか?という問題やその後の方位マップのリカバーに2つのフェーズが存在するメカニズムを解明するために、神経ネットワークの自己組織化モデルを視床-視覚野入力層間に適用し、シミュレーションを実行した。また、生理実験結果を再現することやメカニズムの予測をおこなった。また、視覚野単純型細胞の活動を使って網膜に入力した画像のデコーディング数理モデルを構築し、神経ネットワークの自己組織化シミュレーションで得られた方位マップを使って、その有効性を確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
各感受期の週齢に相当するシミュレーションステップにおいて、正常飼育をおこなった場合、単一視覚経験をおこなった場合、リカバーをおこなった場合に相当する方位マップにデコーディング数理モデルを適用する。縦縞の視覚経験を実施した場合のシミュレーション結果を使い、空間周波数特性の異なる90度方位と0方位の格子刺激を入力した場合における、入力画像とデコードされた画像との類似度を評価することによって、方位マップの構造と機能との関係の解明を目指す。また、齧歯類動物のように方位マップが不明瞭な動物の構造を自己組織化数理モデルによって再現し、方位マップの機能的意味に関する解明を目指す。これらの研究を円滑に推進するために、新規に導入した計算機のGPUによる計算アルゴリズムを構築し、計算速度の向上を図る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、主に研究成果を国際学会で発表するための渡航費や論文投稿費用に使用する。
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