研究課題/領域番号 |
24500325
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
右田 正夫 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (70335157)
|
研究分担者 |
森山 徹 信州大学, 繊維学部, 助教 (20325898)
丸山 慎 駒沢女子大学, 人文学部, 講師 (60530219)
古山 宣洋 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (20333544)
三嶋 博之 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (90288051)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 触知覚 / アクティブ・タッチ / 比較認知科学 |
研究概要 |
最初に、本研究課題が目指す研究の方向性について確認するため、動物の触知覚に基づく行動が共通して持つ特性について考察し、日本生態心理学会第4回大会において発表した。 イトマキヒトデの起き上がり行動における腕間の運動統制および触覚の影響に関する基本的な知見を得るため、管足運動の解析を行った。底が透明アクリル板で作られた水槽における歩行をビデオ撮影し、動画解析によって管足の集団運動を計測することを試みた。その結果、1本の腕についておよそ60本ある管足の約半数の運動を計測することができ、腕の向きや外部刺激の管足運動への影響に関する示唆が得られた。この結果について日本動物行動学会第31回大会において発表した。 オカダンゴムシの行動に関する課題は、T 字路で転向方向を選択させるとき、交替性転向反応を実現する場合とそうでない場合において触角運動にどのような相異が見られるかを観察することであった。課題達成のため、連続T字迷路装置を製作し行動を観察した。すると、「引き返し行動」が、反復性転向反応を交替性転向反応へ修正する役割を果たすことが新たに確認された。また、購入した行動解析ソフトによる触角運動の解析に着手した。 ヒトの触知覚に関する研究として、被験者の指先で紙やすりの肌理の粗さを弁別する実験の予備実験を行った。その実施にかかる実験方法の検討、刺激作成のための素材の調達、そして被験者の手の動き(特に指先の細かな動き)を高速度で記録・解析するための設備環境を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトデに関する研究計画では、起き上がり行動におけるアクティブ・タッチを観察するため、運動器官であると同時に触覚器官でもある管足の運動解析に着手したが、動画解析手法のパラメータ調整に時間を要し、起き上がり行動における腕運動の解析まで進めることができなかった。 ダンゴムシに関する研究計画では、触角運動の解析行う予定であったが、動作解析ソフトウェアの納入が計画より大幅に遅れたため、予備調査的な使用に留まった。 ヒトの触知覚に関する研究計画では、粗さが異なる2枚の紙やすりの弁別実験と運動解析を行う予定であったが、実験実施者の異動があり実験環境の構築に時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒトデについては、起き上がり実験を実施し、腕運動の解析を進める。このとき基質にバリエーションのある環境を設定し、起き上がりにおける触覚の影響を評価する。今年度、消耗品費の計画との誤差により残額が生じたが、次年度の実験関連消耗品費として使用する。 ダンゴムシについては、触角情報と実際に通行可能な迷路の形状とが整合的でないような複雑な迷路において、触角の運動がどのように変化し、多様な環境探索を実現するかを観察することである。このような迷路を製作し、行動と触角運動の映像を行動解析ソフトで詳細に解析し、両者を制御する機構にアプローチする。また、昨年度新たに得られた引き返し行動に関する成果を専門誌へ投稿する。 ヒトについては、被験者の指先による紙やすりの弁別実験を継続実施し、データの蓄積と解析を行う。今年度、打ち合わせの都合上生じた旅費の残額については、25年度以降の旅費として使用する。 また、メンバー全員で各々の結果に関して議論し、動物の触知覚と行為との関連に関する普遍的な特性について考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費(13万円)は全て実験および解析で使用する消耗品(ヒトデ実験水槽、ダンゴムシ走路、紙やすりの弁別実験器材など)に、旅費(67万円)は打ち合わせおよび国内外の学会における成果発表に、謝金(10万円)は被験者および解析補助者への謝金に充てる。
|