研究課題/領域番号 |
24500325
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
右田 正夫 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (70335157)
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研究分担者 |
森山 徹 信州大学, 繊維学部, 助教 (20325898)
丸山 慎 駒沢女子大学, 人文学部, 講師 (60530219)
古山 宣洋 国立情報学研究所, 情報社会相関研究系, 准教授 (20333544)
三嶋 博之 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (90288051)
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キーワード | 触知覚 / アクティブ・タッチ / 比較認知科学 |
研究概要 |
ヒトデの起き上がり行動において、運動器官であると同時に感覚器官でもある管足の運動を解析した。その結果、起き上がりを先導する腕の管足が、起き上がり過程の初期には歩行、終盤には体の支持というように異なる機能を果たすことで効果的な起き上がりが実現していることが示唆された。この結果については、日本動物行動学会において発表した。また、管足運動の異なる腕間にまたがった自己組織化が起き上がりに対して及ぼす影響を、コンピュータシミュレーションによって検討し、計測自動制御学会において発表した。 ダンゴムシに関しては、昨年度実施した連続T字迷路実験におけるダンゴムシの移動パターンを平面上へ移動軌跡として展開するソフトウェアを作成し、その軌跡の予備的解析を実施した。その結果、各個体のスタートから最遠到達地点までの距離と交替性転向反応の発現率の間に正の相関関係が見られ、交替性転向反応が効率的な遠方への移動を実現することが定量的に明らかになった。また、交替性転向反応の連続数の最頻値は2回であること、連続が偶数回の方が奇数回より頻度が高いことも明らかになった。こうした結果の一部は、日本土壌動物学会や日本人工知能学会などにおいて発表した。 ヒトの触知覚に関する研究として、被験者の指先で紙やすりの肌理の粗さを弁別する実験的検討を継続し、本年度は特に実験方法および使用機器に関する再検討を行った。刺激弁別実験を「一対比較」のデザインに統一し、また実験刺激を探索する被験者の指先の運動を記録する高速撮影カメラの設定の見直しをするなど、最終年度に向けた問題を抽出し、改善策を議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトデの運動解析においては、前年度に解析のためのシステム構築の遅れがあり、本年度の実験と解析の実施に影響が出た。 交替性転向反応の適応的側面について、その一部が明らかになったものの、ソフトウェアの習熟が遅れ、触角運動の解析を十分に進めることができなかった。 本年度の研究計画では、粗さが異なる紙やすりの弁別実験を本実験に移行させる予定であったが、実験実施場所として使用していた部屋の改築工事および実験使用器材の見直しなどの事案が重なったことにより、達成度に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトデに関しては、これまでに実施した実験のデータ解析を進めるとともに、基質にバリエーションを持たせた環境における起き上がり実験と解析を行う。 ダンゴムシについては、反復性転向反応を交替性転向反応へ修正することを明らかにした実験結果を学術誌へ投稿する。また、迷路内での触角運動の解析を推進する。 ヒトについては、実験器材の仕様の確認と新規器材を本年度前半に導入し、システム構築を行う。そして本実験としてのデータ収集を完了し、分析を行う。 以上の異なる動物種での触知覚と行動との相互作用における普遍的特性に関して、メンバー全員で議論し結果の取りまとめを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験とデータ解析の遅れにより予定していた成果を挙げることができず、成果発表の旅費に残額が生じた。 追加実験のための消耗品代と成果発表のための旅費として使用する。
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