研究課題/領域番号 |
24500327
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏昭 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (50192620)
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研究分担者 |
山田 歩 東京大学, その他の研究科, 助教 (00406878)
鈴木 聡 青山学院大学, 付置研究所, 助手 (70516377)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 閾下知覚 / 洞察問題解決 / 潜在学習 / 連続フラッシュ抑制 |
研究概要 |
本研究は洞察問題解決過程が潜在的学習プロセスであること,またそこでの情報の貯蔵と表現形式を閾下刺激を用いて検討する独自性の高いものである.閾下刺激の呈示は,連続フラッシュ抑制という,長時間の閾下呈示ができる方法を用いて実験を行っている. 本年は解決状態を閾下で順次呈示していくことで問題解決が促進されるかを検討した.つまり解をすべて一挙に呈示するのではなく,解決のステップに応じて呈示していくというものである.しかしながら,こうした条件下では閾下情報呈示の効果は見られなかった. これに加えて,本年は,昨年までに明らかにされた閾下呈示刺激効果について,別条件下での検討を行った.これまでの結果は閾下刺激が強く働き,通常は15分程度関わる問題解決が数秒で終わることを明らかにした.しかしこれは問題解決というよりも直接プライミングによる想起に基づく解決である可能性がある.そこで,問題解決状況をさらに困難にした状況下での閾下刺激の呈示の効果を検討した.その結果,閾下刺激の効果を直接プライミングとする可能性はきわめて低いことが明らかになった. 次に,より厳密で統制された環境での実験を行うために,新たな刺激呈示環境を構築した.これまでは2台のモニターを用いて実験を行ってきたが,ステレオスコープ実験装置を購入し,一台のモニターで実験が可能になるようにした.またワーキングメモリーの負荷をコントロールする装置を開発した.現在予備実験が終了している段階である. これらの成果を日本心理学会,日本認知科学会,Cognitive Science Societyで発表するとともに,関連の研究を行っている研究者とのワークショップを開催した.また上記の成果をまとめ,学会誌に投稿し,現在査読中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に基づく研究は再検討が必要なものもあるが,ほぼ終了している.また2013年度に実施する実験の下準備も完了している.こうした観点から,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は二重課題を用いて,ワーキングメモリへの負荷,特に視空間スケッチパッドへの干渉を与えた実験を行う予定である.閾下呈示情報は何らかの貯蔵システムに保存され,問題解決をコントロールしていることは,これまでの研究から明らかである.一般にこれらはワーキングメモリ内に存在すると考えられ,特に今回のような図形パズル課題の場合には視空間スケッチパッド内に存在すると考えられる.もしこれが正しいとすれば,視空間スケッチパッド内の情報保持に干渉する課題を与えれば,閾下ヒント呈示の効果はなくなる,あるいは減少するはずである.もしこのような結果が出たとすれば,ワーキングメモリ内に意識からのアクセスができない情報が存在することになる.これは従来のワーキングメモリについての考え方を根底から見なおす契機となる可能性がある.
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次年度の研究費の使用計画 |
様々な条件下での検討が必要なため,実験装置の開発は今年も続く.現在の開発環境はかなり古くなっているので,新しいPCを購入する.また,得られたデータの解析のためのソフトウェアの購入も必要になる.加えて,これらの成果の発表のための旅費,実験実施に補助者への謝金,海外への論文投稿のための閲読料などが発生する.
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