研究課題/領域番号 |
24500327
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 宏昭 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (50192620)
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研究分担者 |
山田 歩 帝塚山大学, 経営学部, 講師 (00406878)
福田 玄明 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (40615100)
鈴木 聡 成蹊大学, 理工学部, 助教 (70516377)
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キーワード | 洞察 / 問題解決 / 潜在処理 / 閾下刺激 |
研究概要 |
本年は3つの実験を行った.そのうちの2つは,閾下情報が単に問題解決を促進するだけでなく、問題解決のプランやストラテジーに影響を与えるかを検討するものであった.このため解決のステップに対応して、閾下情報を順次呈示し、その順序に応じたパフォーマンスが見られるかを検討した.閾下刺激の提示方法としては連続フラッシュ抑制を用い、課題は従来用いてきたTパズル(空間パズル)と9点問題を用いた.2つの結果ともに仮説を支持するものではなかった.閾下順次呈示をした場合にはそもそも問題解決への促進効果が見られなかった.これは否定的結果であるので、以下は推測に過ぎないが、この結果は潜在情報の貯蔵庫がワーキングメモリとは異なること、またそれはワーキングメモリのような情報の操作機能を有していないことを示している可能性がある. もう1つの実験は、閾下ヒント情報の呈示の際に、ワーキングメモリ特に視覚情報の貯蔵庫に干渉を与える副次的課題を実施し、それによってヒントの効果に変化があるかを検討した.これについては予測とは異なるが、副次課題によって負荷をかけられたグループの成績が有意に向上するという興味深い結果が得られた.この原因については現在検討中である. 研究発表は閾下情報順次呈示の実験については日本心理学会で行い、ワーキングメモリへの負荷についての実験はCognitive Science Societyの年次総会論文として投稿し、ポスター発表として採用された.これらの研究の社会的意義(無意識的情報に寄るオフィスワーカの動機づけ)を強調した発表を人工知能学会全国大会において行った.また昨年までの成果をまとめ、日本認知科学会の学術誌に投稿し、受理、掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の実施についてはおおむね順調に進展している.ただし閾下刺激の継時呈示についての結果は、予測とは異なるものである.これがWM以外の貯蔵装置の特性なのか、または実験方法の不備によるものなのかは判然としない部分もある.これの検討をさらに進めることが必要となる.また上に記したように、副次課題が促進効果を持つなどの予想外の結果も存在し、これらを統合的に説明する枠組みを現在模索中である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、副次課題の与える影響をより包括的に検討する.特に、音韻ループや実行機能に負荷をかける課題、また視空間スケッチパッドに負荷をかける課題を与えたときの、閾下刺激の効果を検討する.具体的には、構音抑制課題、スイッチング課題を実施する。これらを通して、問題解決に影響を与える閾下情報の貯蔵の形式、機能について統合的な県警を提出する予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
学務の関係、および学会での投稿予定であった論文が完成しなかったため、旅費に大幅な残額が生じた.また英文校閲にかかる費用を計上したが、利用しなかったため残額が生じた. 今年度は海外の学会での発表がすでにアクセプトされているので旅費として利用する予定である.
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