研究課題/領域番号 |
24500328
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
中原 はるか 帝京大学, 医学部, 講師 (20302739)
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研究分担者 |
若山 貴久子 帝京大学, 医学部, 助手 (10439630)
室伏 利久 帝京大学, 医学部, 教授 (30242176)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 聴覚認知 / 内側膝状体 / 一次聴覚野 / 難聴 |
研究概要 |
研究計画1については、より広い可能性を追求するための変更を加えた。現在、ラットを用いた聴覚系の研究については、大脳一次聴覚野だけでなく二次聴覚野とされる領域と一次聴覚野よりは下位の視床(内側膝状体)、さらに辺縁系・扁桃体などの情動系までをいれていわば大脳聴覚関連ネットワークとしての可塑性・学習効果をみることが試みられている。この効果をあげる方法としては、可塑性の大きい幼児期の何らかの音刺激を与える方法、迷走神経刺激などの神経伝達刺激を行う方法、報酬を与え訓練を行う方法などが知られている。これらの中で、最終的には研究の目標であるヒト成人の難聴症例に対応するため、ネットワークでの大脳一次聴覚野の前段階としてより補間効果があると考えられる内側膝状体での反応を聴覚野とともに調べることとした。一次聴覚野に上行する前に内側膝状体ですでに周波数弁別は完了していると考えられる報告もあり、内側膝状体と一次聴覚野で、音への反応を同時計測できれば、潜時の違い、同期性、反応の相関関係などから、ネットワークでの音処理システムをより三次元的に検討するとことができると考えた。今までのところ、聴覚野と内側膝状体で同時に音への反応を記録した報告はまだない。まずは、聴覚野と内側膝状体で反応を同時計測するための電極作成を行い成功した。またこれを用いて、ラットでの音反応の計測を試み、内側膝状体での反応を得た。今後は、内側膝状体での位置の確定を還流固定も行い確認しながら、音刺激もより複雑なものにしていく予定である。研究計画2については、順調に施行した。具体的には予備的に、補聴器外来を受診している難聴症例で純音聴力閾値と語音明瞭度の関係を調べた。それを用いて、純音聴力に比べて著しく語音明瞭度の悪い症例を17症例抽出し、検査を施行した。これについては、2012年の聴覚医学会で発表し、論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画1については、より広い可能性を追求するためであり、発展的変更となった。動物実験では、現在は聴覚野の一部位に限られる実験ではなく、ネットワークで動的に現象をとらえる方がよいと考えた結果であり研究に三次元的な意味合いを付加できたことで評価できると考えている。内側膝状体は、ラットでは脳の深部にあり、大脳表面にある一次聴覚野と異なり、その正確な役割、働きが未知の部分を多くもつ。しかし、実際には、一次聴覚野より下位でありながら、聴覚野でされるほとんどの処理はすでに行われているとされる報告も出ている。したがって、聴覚認知という観点から、内側膝状体での反応を一次聴覚野と同時にとることができれば、最終的には計画の目標であるヒト成人の難聴症例の認知につながるものとなると考えている。現在までに、今までに報告のない、すでに、一番の問題と考えられた、一次聴覚野と内側膝状体の同時計測を成功させることができており、計画としては変更ではあったが、まずまずの進行状況であると考えている。研究計画2については、ほぼ予定通りの進行である。正常データの蓄積を終了し、それを基に日本での学会で発表し、論文を投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画1については、一次聴覚野と内側膝状体での音反応への同時計測のデータの蓄積を行い、さらに難聴ラットでの同様の実験へと進みたい。具体的には、少なくとも5匹程度の正常ラットでの純音への反応を一次聴覚野・内側膝状体で同時計測し、あわせて還流固定を行い、実際の反応計測部位の同定を行う。純音への両者の反応を時間的・周波数的に多角的に解析を行う予定である。各部位で、縦方向と横方向に複数の計測を可能にしたため、四次元的にデータが広がり解析が非常に煩雑になることが予想されるので、まずは、同期性・相関関係に注目して情報の流れをつかむことを考えている。研究計画2については、抽出した純音聴力検査閾値に比べて著しく語音明瞭度の低下した症例と正常症例について、脳波を用いた反応と雑音負荷の状況下での言語刺激に対する反応を調べていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ヒトでの雑音負荷状況下での誘発反応のために、刺激装置一式を予定している。ある程度手作りすると安くなるため、音源・スピーカー・増幅装置などをコンピュータを使って制御する方式をとるよていである。動物実験のための手術器械・消耗品、また、電極の状況によっては、再度設計し直し、発注する可能性もある。
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