本研究は<主観的把握>の傾向に基づき、日本語話者が文芸・言語形式・視覚文化の分野でどんな表現的志向性を見せるか、それらがいかに相同的かを検証したものである。日本語話者は注目に値する現前の<見え>を「しるし:sign」として主体的に捉え、そこから非現前の<見え>を創出するとともに、形式的には様式化(例えば<見立て>)を洗練させながら、<見え>の発信と受容を促す共感のハビトゥスも編み出した。こうした表現をめぐる認知的行為は古代の万葉集に発して現代に至るが、<主観的把握>の傾向のある言語話者や、日本に影響を与えた中国語話者の言語・文化では未だ観察されていない点で、本研究は日本文化の独自性を示唆する。
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