研究課題/領域番号 |
24500331
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
生塩 研一 近畿大学, 医学部, 講師 (30296751)
|
キーワード | 時間認知 / 時間知覚 / 大脳生理学 / 電気生理学 / 前頭前野 / 線条体 / 大脳基底核 / 霊長類 |
研究概要 |
1秒や2秒の比較的短い時間長を区別するといった時間認知の脳内メカニズムについて、ニホンザルを使って調べている。時間長は動物が感知できる感覚種(視覚、聴覚、触覚など)に依存しない物理量であるにも関わらず、これまでの動物を使った時間認知研究では視覚や聴覚の単一感覚種が時間長を呈示するために使われてきた。本研究課題では、視覚と聴覚という異種感覚で時間長呈示をすることで、特定の感覚種に依存しない、より根本的な時間認知のメカニズムの解明に挑んでいる。ちなみに、時間長を与える視覚刺激には時間的に変化せず色のついた図形(緑色の四角形)を、聴覚刺激には2,000Hzの純音をそれぞれ採用した。異種感覚で時間長を与えることで、ニホンザルに時間弁別させるトレーニングには苦労したが、本研究課題の1年目の後半には前頭前野から細胞外記録法による単一細胞レベルでのニューロン活動記録ができるようになった。2年目は、ニューロン活動の記録実験を推進し、データの蓄積に努めた。1年目に得られた予備的な傾向を支持する結果を得ている。つまり、視覚刺激に応答するニューロンが多く、聴覚のみに応答するニューロンや、視覚と聴覚の両方に応答するニューロンは少ないようである。前頭前野には5つの感覚種の全ての情報が集まると考えられているが、時間長は感覚種別に処理されている可能性が示唆される。また、呈示時間長に依存して発火頻度が変わるニューロンが複数みられた。さらには、視覚刺激に対する応答が、聴覚刺激よりも早く起こる傾向も新たに認められた。これらの結果は、3年目にデータ蓄積を進めながら、慎重に検討していきたい。なお、2年目の研究成果は、第36回日本神経科学大会(京都)や、第91回日本生理学会大会(鹿児島)で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り、ニューロン活動の記録実験が進められたので、区分を「おおむね順調に進展している。」とした。ただ、動物(ニホンザル)に与える課題がやや難しく、1年目に動物を訓練するのに手間取ったために、ニューロン活動記録実験がまだ充分に進められなかったことを反省している。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目でニューロン活動記録実験が軌道に乗ったのでデータ蓄積に努め、動物に与える時間長が前頭前野では視覚刺激か聴覚刺激かで別々に処理が進むのかどうか、また、2年目で新たに見出された、視覚刺激と聴覚刺激に対する応答のタイミングの違いなどについて詳細な解析を進める。本研究課題を開始する前に予備的に検討していたヒトの心理実験は実施せず、動物実験に傾注する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
2年目は比較的順調に進んで予算額を使用したのですが、288,610円の次年度使用額が生じました。これは、1年目に実験動物(ニホンザル)が課題をできるようにトレーニングするのに時間がかかり、ニューロン活動の記録実験が予定よりも進められずに消耗品があまり必要なく繰越額の299,780円が発生したためです。 2年目で、ニューロン活動の記録実験が軌道に乗ったので、データ蓄積のためペース上げて実験をするめるため、記録用電極や薬品といった消耗品の購入などに充てる予定である。
|