研究課題/領域番号 |
24500333
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研究機関 | 駒沢女子大学 |
研究代表者 |
丸山 慎 駒沢女子大学, 人文学部, 講師 (60530219)
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研究分担者 |
冨田 昌夫 藤田保健衛生大学, 医療衛生学部, その他 (40367694)
古山 宣洋 国立情報学研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (20333544)
三嶋 博之 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (90288051)
野本 由紀夫 玉川大学, 芸術学部, 教授 (50407748)
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キーワード | 認知科学 / 器楽 / 巧みさ / 理学療法 / 生態心理学 / 自己効力感 |
研究概要 |
本研究の目的は、器楽演奏の“巧みさ”を支えている知覚的・身体的スキルの構造とその学習過程について、近年の運動研究および生態心理学的な観点から分析を行うことであり、以下の2点を主たる問題としている:(1)楽器の操作に直接関係する指や手、腕だけではなく、全身の連鎖構造(体幹や腰部)の関与を実証的に検討する、(2)姿勢の歪みや協調の乱れにより、習得したスキルを十分に行使できなくなっている演奏者の身体が、本来の状態を回復するための要因について、演奏者の姿勢に対する理学療法的な介入を行い、知覚と身体行為の「再接続」という観点から器楽演奏における巧みさの基盤を明らかにする。当該年度は、実験器材の確定および計測環境の構築を行い、演奏者の身体バランスや身体軸の測定指標とする「体圧分布」を計測するシステム一式を導入した。現在はまだ予備的な運用に留まっているが、次年度の本格運用を見据えた調整を行った。一方、上記の実験準備と並行して、音楽を高度な水準で実践している演奏家の「実践知・身体知」についての知見を収集するための観察調査も実施した。当該年度は、プロフェッショナルのオーケストラ(公益財団法人東京フィルハーモニー交響楽団)の協力を得て、国際的水準にある2名の指揮者のリハーサルを複数回にわたって観察し、その映像データの分析を通して、本研究の目的との関連が深いと思われるポイントを抽出した。さらに当該年度は、音楽と身体性という本研究が標榜するテーマについて、器楽演奏を行う児童の自己効力感との関係から議論するという教育的・臨床的な応用への試みも開始し、その成果の一部については関連学会において発表を行った。また本研究の基盤となっている音知覚の発達に関する実験研究も並行して実施し、関連学会においていくつかの成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
音楽演奏の実践知・身体知に関する観察調査については、概ね計画通りの進捗状況であるといえるが、実験研究に関しては当初の計画よりもやや遅れているといわざるを得ない。これは実験実施予定の場所が改修工事等のために使用できない期間があったことおよび使用器材の再検討などの事案が重なったためである。
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今後の研究の推進方策 |
実験研究の部分に関しては、実験器材の導入および実験実施場所に関する当該年度の問題は既にクリアにすることができているので、予備実験および本実験を速やかに実施していく。また本研究は分析手法自体もやや探索的な部分を含んでおり、少数事例の計測データをもとにして、手法および結果を精査していくスタイルをとる。それゆえ、実験を効率よく実施することによって、当初の研究計画で構想した目標を達成できるものと考えている。
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