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2013 年度 実施状況報告書

因果推論が多感覚統合プロセスに及ぼす影響の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24500335
研究機関独立行政法人産業技術総合研究所

研究代表者

梅村 浩之  独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (10356587)

キーワード自己遂行感 / 因果推論 / 視覚
研究概要

本研究では二つの事象の生起における因果関係を推測する過程(因果推論)が外界の知覚に与える影響について,実験的に検討を行い,知覚内容がこのような因果推論によって変容するか,及び知覚システムが複数の事象を関連づける,またはそれぞれを独立とするプロセスがどのような要因によって影響を受けるかを明らかにすることを目的としている。また,これらのプロセスは自己の身体や操作対象の運動において,自分が行動源であるとする自己遂行感に深く関与している.
自己の身体の知覚上の位置と計画上の位置のずれをどの程度人間が検知できるかについて検討した.今回の研究においては,行為の開始における時間上のずれではなく,身体位置の空間的なずれについて検討を目的とした.過去の研究はこの時間ずれを手がかりにしたものが多いが,人間の行動や遠隔操作などの応用を考えたとき,休止のない連続行動についての検討が必要であると考えられる.実験ではターンテーブルの上に手をのせ回転をしてもらい,その回転中の自己の現在の運動と時間を遅らせた運動画像を観察してもらい,これをもとにこの能力について検討をした.
結果を分析したところ,空間位置のずれだけでも,動かしやすい速度(一周1秒)であれば,時間軸上で開始時間のずれとおなじぐらいの精度でずれを検出できることが示唆された.しかし,運動速度が速い,もしくは遅い条件では検出の感度は悪くなった.
また,一つの仮説として,身体を動かそうと計画している方向とすでに過ぎた方向については感度が異なるのではないかという説について検討を行った.映像の時間をずらすだけでは先の方向への提示は当然不可能であるが,今回の実験は円運動を繰り返すために約一周前の動きを提示することができ,これをもとにこの仮説について検討を行った.その結果は進行方向にかかわらず,位置のずれの大きさのみで判断を行っていることを示唆するものであった.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H25年度は昨年度の進捗を踏まえたうえで,いくらかの軌道修正を行った.中途の所外への兼務出向があり,想定していた以上に兼務による研究遂行が難しい時期があったことは否めないが,兼務が終了した以降は順調にデータを得ることができた.

今後の研究の推進方策

H25年度に得た結果は位置情報のみからでも自己の現在の運動と,時間ずれを起こした運動が運動開始時のずれと同程度の正確さで弁別可能である(ただし,動かしやすい速度条件において)というものであった.一方で,時間をずらして提示された一周前の運動との混同率は高いことも示された.本研究ではこれらの実験から得られた結果を身体行動やデバイスからの情報を自然な同一性を持って利用者に呈示する上での指針とすることを目的としているが,今年度はこの目的と結果を踏まえて,ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いたバーチャルな環境内で身体(画像)を提示,操作し,これをもとに自己遂行感,ひいては自己所有感がどのようなメカニズムで成立するのかを通して,これらの感覚の効果的な付与について検討をすすめる.具体的にはHMDを通して身体の投影画像を提示し,被験者の動きに応じてこれを動かす中で,画像のリアリティ,視野内における位置や姿勢などの影響を調べる.また,外界の物体に対する働きかけについても引き続き検討を進める.

次年度の研究費の使用計画

外部機関への兼務出向があり,研究遂行が難しい時期があったため,次年度使用額が生じた.
アシスタントを雇用し,分析などのペースを早める.また,海外・国内学会での発表,実験のためのソフトウェアの購入などを計画している.

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公開日: 2015-05-28  

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