研究実績の概要 |
確率密度関数の比として定義される関数である密度比は,おもに数理統計学などの諸分野において重要である.近年,申請者らの研究の展開により,ますますその重要性が認識されつつあり,応用分野が急速に拡大している.重要な応用例としては,共変量シフトの下での回帰分析や判別分析,統計的仮説検定,次元削減などが挙げられる.昨年度の成果を踏まえ,本年度は特に離散確率分布に着目し,データから分布を推定するための方法を提案した.この方法では,経験分布による局所化という新しい分布の変換法を提案し,計算効率を大幅に向上させることに成功した.さらに斉次ダイバージェンスとよばれる相対不変性を満たすダイバージェンスを用いることで,正規化定数の計算が不要になり,大規模モデルに適用することが可能になる.提案した統計手法が優れた精度と計算効率を達成することを,理論的,数値的に確認した.経験分布による局所化では,通常の統計モデルと経験分布から定義される密度比に関連する分布を新たな統計モデルとみなし,統計的推論に応用する.この研究成果は,論文 Takenouchi T, Kanamori T., "Empirical Localization of Homogeneous Divergences on Discrete Sample Spaces." としてまとめられ,国際会議 NIPS 2015 の場でポスター&スポットライトとして発表された.関連して,ロバスト推定を行うための統計的手法について考察し,研究成果を以下の論文にまとめた.Kanamori T., Fujisawa H., "Robust Estimation under Heavy Contamination using Unnormalized Models",Biometrika, vol.102, no.3, pp. 559-572, 2015.
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