研究概要 |
本研究は,統計的性質が時々刻々変化する非定常不規則信号を表現するための数学モデルを構築し,そのモデルに含まれるパラメータを推定する新しい手法の開発と,その推定された係数を用いた時変なスペクトルの表現手法について検討することを目的としている. 初年度は,時変係数を持つ自己回帰モデルに着目し, 白色雑音が付加された観測データから時変係数を推定する問題を取り扱い, 次の3点を実施した.i) 基底関数で表現されたモデル係数の最小二乗法による重み推定手法の開発.ii) トラッキングによる推定手法の開発.iii) 提案した手法の比較,性能評価. i)において提案した手法は, Grenierが用いた, 時変係数を基底関数と重みパラメータで表現する方法を基本に非定常信号のモデル化を行い最小二乗法を用いるといったすでに提案されている手法に,観測データに付加されている,白色雑音により発生する推定値のバイアスの問題を,①雑音の部分空間を基にした一般化固有値解析を用いた手法,②EIV(errors-in-variables)で解決するといった新しい手法を組み合わせて開発行った.またii)において,トラッキング問題でターゲットの運動を表現する数学モデルを,本研究における係数の時間変化に応用し, カルマンフィルタやパーティクルフィルタなどを用いたパラメータ推定手法を開発した.iii)ではi)およびii)で開発した各手法の有効性の確認とそれぞれの手法の比較をコンピュータシミュレーションにより比較した.
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