研究課題/領域番号 |
24500343
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
若木 宏文 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90210856)
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キーワード | パラレルプロファイルモデル / ランダム効果 / 共分散構造 / 漸近展開 |
研究概要 |
2012年度研究実績を踏まえた2013年度の主な研究計画は次の2つであった。 (1) ランダム効果を持つパラレルプロファイルモデルについて、Yokoyama (1995, AISM )が導出した、ランダム効果の導入によって導かれる共分散構造の検定統計量の分布の漸近展開を導出し、そこで得られたテクニックを用いて、モデル選択基準を構築する。 (2) ランダム効果を持つパラレルプロファイルモデルの一般化として、正規線形混合モデルにおける仮説検定統計量や未知母数の漸近分布の導出、および情報量基準の導出に取り組む。 (1) については、ランダム効果の分散パラメータが正の場合には、Box (1949,Biometrika) の手法を用いて、検定統計量の分布の漸近展開を導出した。分散パラメータが 0 の場合には、検定統計量の分布は、分散パラメータが正の場合に得られてた分布関数の、打ち切りベータ分布に関する期待値として表現されることが分かり、ラプラス法(鞍点近似)によって分布の漸近展開が得られた。これらの結果は、論文として執筆中である。情報量基準の導出に関しては、モデルに含まれる未知母数の最尤推定量の期待値の展開を基に、モデルのリスクのバイアスを計算する必要があるが、前述のラプラス法が利用できる見通しを得ている。 (2) について、ランダム効果がひとつの場合には、(1) と同様の手法が適応できると考えているが、複数の場合には、複数の分散パラメータの推定量うち、母数空間の境界に位置するものの個数によって統計量の形が変わることになり、検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ランダム効果モデル、線形混合モデル、一般化線形混合モデル、一般化推定方程式法における変数選択やモデル選択法の開発を目的としている。ランダム効果モデルに関しては、パラレルプロファイルモデルに関する共分散構造の仮説検定統計量分布の漸近展開の導出をし、そこで得たテクニックがモデル選択基準の導出や、さらに、一般のランダム効果モデルにも応用できるという見通しを得ている。線形混合モデルや一般化線形混合モデルについては、未だ未着手である。一般化推定方程式法における変数選択法については、予測誤差を基にした選択基準を導出した。 以上のことから、補助事業期間全体での研究目的に対して、現在までの達成度は4割程度と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
パラレルプロファイルモデルにおける共分散構造の仮説検定統計量の分布の漸近展開導出に用いた手法を、未知母数の最尤推定量の分布および、モデルのリスクのバイアス評価に適用する。モデルのリスクとしては、カルバック=ライブラー擬距離に基づくリスクと、予測誤差に基づくリスクの両方を取り扱う。現時点で得られている展開手法は、ランダム効果や誤差項の分布の正規性の仮定に強く依存しているが、新たな課題として、正規性の仮定を緩めることについて検討したい。 線形混合モデルについては、単回帰モデルの切片項と回帰係数の両方に個体差を表わす確率変数を導入したモデルについて、まず、未知母数の最尤推定量の分布の漸近展開導出に着手する。個体差を表わす2次元確率変数の共分散行列のランクが正である場合には、ランダム効果がひとつの場合と同様の手法が適用する。ランクが 0、すなわち、切片項にも回帰係数にも個体差が無い場合については、多次元の鞍点近似の利用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年度に、情報収集・研究成果発表のため外国出張を計画しており、そのために2013年度の使用を節約した。 情報収集および研究成果発表のため台湾で行われる研究集会に出席し、その旅費に使用する。 統計解析手法の数値評価のため、計算機を購入する。
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