研究課題/領域番号 |
24500346
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研究機関 | 尚美学園大学 |
研究代表者 |
華山 宣胤 尚美学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20299853)
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研究分担者 |
室谷 健太 名古屋大学, 医学部付属病院, 助教 (10626443)
四方 義昭 尚美学園大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60327145)
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キーワード | 人間の寿命限界の推定 / 極値理論の応用 / 国際研究者交流(韓国,中国,台湾) |
研究概要 |
本研究の目的は(i)生活環境の変化が超高齢者の死因分布に与える影響,(ii)死因分布の変化が寿命限界に与える影響,(iii)寿命限界に影響を与える生活環境因子を明らかにすることである.そして,今年度は(1)第1段階モデル解析用ツールの開発と実データの解析(2)第2段階モデル(死因分布⇒寿命限界)の検討(3)第2段階モデル解析用ツールの開発と実データの解析の各作業を行う計画であった. これらの目的は,生活環境が時代とともに変化していているため,世代によって寿命限界が異なるであろうという予測に基づいたものであった.しかしながら,前年度に人口動態統計から絶滅コホートを用いて得られたデータに基づいて推定した日本人の寿命限界は,時代と関係なく世代によって大きく変動していた.そこで,本年は計画した作業に取り掛かる前に,寿命限界の推定値が変動する理由について詳しい検討を行った.その結果,生年の真偽に疑いのある泉重千代さんのデータを取り除いて推定をやり直すと変動が小さくなることが判明した.また,昨年に利用可能となった2012年度の死亡者数を加えて得られたデータを用いると,世代が新しくなるとともに寿命限界の推定値の変動が小さく,そして男女の差が無くなることが分かった. 以上の推定結果を日本の戸籍制度に関する歴史を照らし合わせた結果,次のことが分かった.まず,壬申戸籍制度が制定された1873年(明治6年)より後のデータに基づいた推定では,寿命限界は男女で差が無いことが分かった.そして,明治19年(1986年)式戸籍法が制定された後のデータに基づく推定では,寿命限界は男女ともほぼ123歳であることが分かった.そして,当該研究の一環として尚美学園大学で開催した国際会議では,これらの結果について韓国,中国,台湾の研究者と議論し,各国の状況との比較を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標は,寿命限界と生活環境や死因分布との関連を明らかにすることであったが,前年度に人口動態統計から絶滅コホートを用いて得られたデータに基づいて推定した日本人の寿命限界が,時代と関係なく世代によって大きく変動するため,計画した作業に取り掛かる前に,変動する理由について詳しい検討を行った.その結果,生年の真偽に疑いのある泉重千代さんのデータを取り除いて推定をやり直すと変動が小さくなることが判明した.また,昨年に利用可能となった2012年度の死亡者数を加えて得られたデータを用いると,世代が新しくなるとともに寿命限界の推定値の変動が小さく,そして男女の差が無くなることが分かった.そこで,データの整理と推定作業を再度行ったため,計画に比べて遅れる結果となった. 以上に加え,「統計票の二次利用」を申請し得られた人口動態調査の個票データの集計作業が,予想より困難であったため,100歳以上の死因分布の変化の把握する作業も遅れている.さらに,再推定した結果は当初の予想と異なり,寿命限界が123歳前後へ収束する傾向が見られたため,死因分布の変化との関連については,議論の方向性を見直す必要が生じている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は「統計票の二次利用」を申請し得られた人口動態調査の個票データの集計を進め,死因別に寿命限界の推定を行う.これは,死因をレトロスペクティブに個人特性とする考えで,例えば,癌で死亡する人々の寿命限界は何歳,っといったものである.もし,死因別に推定した寿命限界も123歳であれば,死因分布が変化しても寿命限界は変化したいことが分かる.一方,死因別に寿命限界が異なると推定された場合には,死因分布の変化と生活環境の変化を把握し,寿命限界が延びる可能性についての議論を行う. また,個票データを地域別に集計することにより,地域差についての議論を行う.これは当初の研究計画には無かったものだが,国内外での学会発表における他の研究者との議論の中で地域差の重要性を認識したため,新たな目的として設定した.地域によって寿命限界が異なると推定された場合は,生活環境の地域差と寿命限界との関係を議論する予定である. さらに,25年度(26年2月)に行った国際会議を発展させ,アジア地域で人間の寿命についての研究を行っている研究者との連携を深める予定である.特に,少子高齢化の著しい極東諸国(韓国,中国など)の研究者との議論により,寿命と社会との関わりを明らかにするつもりである.
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