研究課題/領域番号 |
24500349
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
船渡川 伊久子 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 講師 (80407931)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 喫煙 / 喫煙開始年齢 / 肺癌 / 繰り返し横断調査 / 出生コホート |
研究概要 |
喫煙の害にも関わらず、なお13億人が喫煙している。喫煙開始から死亡までが非常に長いこと、出生コホート間の喫煙習慣の複雑な違いがその影響の大きさを分かりにくくしている。喫煙開始年齢は喫煙期間も表す重要な指標だが、各国の長期推移の報告は少ない。本年度は日本の喫煙開始年齢と喫煙率、肺癌死亡率、英国の喫煙開始年齢と肺癌死亡率の長期推移を出生コホートに着目し、それぞれBull World Health OrganとBMJ Openに発表した。喫煙は世界的問題であり、国際誌への掲載は重要である。他国に比べ日本人男性は喫煙率が高いが、肺癌死亡率が比較的低く、これらの出生コホートでは若年期喫煙開始割合が低い(例:1900-45年出生コホートの喫煙率は78%以上、1/1000人以上死亡する年齢は60-64歳以上、19歳までの喫煙開始は<30%)。日本人女性では長年成人喫煙率はほぼ一定のまま肺癌死亡率が上昇した。この現象は喫煙率が出生年に従って大きなU字の形状であることで説明できる。英国男性では1900-25年コホートで若年期喫煙開始割合が高く(15、17、29歳で>32%、>50%、>80%)、対応して肺癌死亡率が高い(50-54歳で1/1000人以上が死亡)。英国女性では1898年から1925年コホートの間で若年期喫煙開始割合が明らかに上昇し(15、17、29歳で2→12%、4→24%、13→54%)、対応して肺癌死亡率が上昇した(1/1000人以上死亡する年齢が75-79→60-64歳)。若年期の喫煙開始は日本人男女、英国女性で長年増えているが、後年の肺癌死亡率は未観測であり、若年期喫煙の遠い将来における危険性を過少評価してはならない。長期データのある国の経験を生かすこと、出生コホートに着目した長期モニタリングが重要である。この他、経時データ解析の理論面に関し発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は、(1)過去の調査データの収集、(2)文献調査、(3)実際のデータの解析、(4)統計学的な方法論確立と問題点の検討、(5)研究成果の公表を予定しており、順調に進展した。詳しくは、以下のとおりである。(1)日本および英国の喫煙に関する過去の調査データの収集を行った。(2)喫煙に関する文献調査を行った。方法論に関する文献調査は着手している。(3)日本および英国のデータの解析を行った。国際比較に関しては着手している。(4)統計学的な方法論および問題点の検討に関して着手している。(5) 英国(Great Britain)における喫煙開始年齢と肺癌死亡率、日本における喫煙開始年齢と喫煙率、肺癌死亡率の長期推移を出生コホートに着目しそれぞれBMJ OpenとBull World Health Organに発表した。英国の結果については日本疫学会で発表を行った。特にBull World Health Organは開発途上国の公衆衛生に焦点をあてた国際誌である。現在、低所得国での喫煙が問題となっているが、低所得国では喫煙および死亡の長期データのない国も多く、日本や英国など長期データのある国の経験を生かすことが重要である。このため、日本と英国の結果をそれぞれ国際誌へ論文公表した点は非常に達成度が高い。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、(1)過去の調査データの収集、(2)文献調査、(3)実際のデータの解析、(4)統計学的な方法論確立と問題点の検討、(5)研究成果の公表を予定している。詳しくは、以下のとおりである。(1)引き続き調査データの収集を行う。喫煙に限らず、死亡統計に影響を与えているのではないかと考えられる多様なリスク要因に関して検討する。また、他国、特に欧米とアジアでの統計データの存在について検討する。(2)引き続き喫煙および方法論に関する文献調査を行う。(3)国際比較を行う。喫煙以外のリスク要因についても解析を行う。(4)統計学的な方法論および問題点の検討を行う。(5) 喫煙開始年齢、喫煙率、肺癌死亡率の出生コホートを考慮した国際比較の結果の論文公表及び学会公表を行う。統計学関連の学会で発表する。特に前年度からの研究成果を日本計量生物学会、International Society for Clinical Biostatistics、日本疫学会などで発表予定である。非専門家に対して、分かりやすい文章での解説を作成し、ホームページでの公表あるいは図書等での公表を行う。喫煙と肺癌の問題、あるいは肥満の問題などは幅広い人々に理解してもらうことが、重要である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
|