研究実績の概要 |
提案者らはヒトの長い遺伝子について、生成されるエクソニック・イントロニックRNAの発現量の波動態シミュレーションに世界で初めて成功した。ここで、シミュレーションについての[時間×空間]の分解能は、[0.01(min)×1(bp)]レベルの高密度な計算とした。本研究では、これらの結果をさらに応用し、粒子としてのRNAPII実体の運動から、波としてのRNA生成のソリトン系波動態シミュレーションへと研究を進展させた。ソリトン方程式の代表的なものにはKdV方程式、非線型Schrödinger方程式、戸田格子方程式、箱玉CAなどがあり、「津波」もソリトン波の一種である。ここでは、前年度までの研究項目(1)(2)で得られたRNAPII実体の運動データ、各種タンパク質結合でーた、エピジェネティック修飾の時空間座標情報に加えて、RNAPIIの粒子動態シミュレーション結果を用いることで、転写におけるRNA生成モデリングを行い、より精度の高い遺伝子転写の原理解明につなげることが可能となった。また、探索空間での検証の際に、複数RNAPIIの協調運動において、その相互作用間隔{Δ(k,j)}にいくつかの規則が潜んでいることを計算で示した。そこで、複数RNAPIIのソリトン系協調運動を制御する因子の分子生物学的意味の解明についても、遺伝子構造や速度変化領域などを詳細に解析することで、この特定規則と転写ファクトリーの3次元構造に潜在するメカニズムの予測を行った。これらの研究成果については、論文、解説記事、招待講演などで発表を行った。
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