研究課題/領域番号 |
24500364
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大和田 勇人 東京理科大学, 理工学部, 教授 (30203954)
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研究分担者 |
青木 伸 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00222472)
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キーワード | 機械学習 / 創薬 / 酵素 / スクリーニング |
研究概要 |
本年度は、機械学習を用いた阻害剤候補化合物の結合判定を行い、新しい阻害候補化合物を設計した。 機械学習を用いた阻害剤候補化合物の結合判定では、結合するかどうかが未知である化合物について、高い結合判定性能を目指した。そこで、病気に関係する酵素に対して、結合の強い阻害剤と、結合の弱い化合物を集めた。それらの化合物の特徴を機械学習することで、新しい阻害剤候補化合物の強弱を判定した。この際、機械学習に用いる特徴データとして、化合物の分子量や疎水性、エネルギーなどの物理的、化学的性質を示す化合物情報を用いた。特に、化合物情報は酵素の情報を用いずに計算することができるため、酵素の三次元構造がなくとも結合判定が可能である。 また、機械学習においては、高い精度で値を予測できるサポートベクターマシンを用い、回帰計算機能によって化合物の結合の強さを示す結合可能性を計算した。結合可能性を用いることで、酵素に結合する可能性が高い阻害剤候補化合物を得ることができる。 約33000化合物を用いた実験の結果、阻害剤を選び出す性能が非常に高いことがわかった。また、それらの化合物を学習に用い、新しい阻害剤候補化合物の結合を予測したところ、結合可能性が高い化合物を得ることができた。そして、この化合物について酵素との結合実験を行ったところ、酵素を強く阻害することが明らかになった。そのため、阻害剤候補化合物の結合可能性を計算することで、酵素と強く結合する可能性が高い化合物を選び出すことができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、機械学習を用いた阻害剤候補化合物の結合判定を行い、新しい阻害候補化合物を設計した。 まず、前年度の研究を基に、病気に関わる酵素について、酵素阻害剤の結合判定を行うこととした。このとき、機械学習に用いた際に特に有用であった、化合物の分子量や疎水性、エネルギーなどの物理的、化学的性質を示す化合物情報を用いることとした。そして、酵素に強く結合する化合物と結合の弱い化合物が集められたデータベースを用いることにより、多数の化合物を学習に用いることを可能にした。 そして、機械学習による学習結果を用いて、研究分担者の青木教授が所持しているデータについて結合可能性を計算した。その結果、すでに結合の強さがわかっている化合物について、結合が強いか弱いかを高い精度で判定できることが明らかとなった。そして、結合の強さがわかっていない阻害剤候補化合物の中から、結合可能性が高くなった化合物を選び、結合実験を行ったところ、強く結合することが明らかとなった。そのため、本研究の達成度は高いといえる。 以上の実績から、本研究の手法を他の酵素に利用することを検討しており、結合情報が多く得られている酵素とその阻害剤の特徴を学習することにより、他の酵素での結合を予測する手法を研究する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、論理プログラミングにおける相互作用情報と異なる酵素に対する結合予測である。 論理プログラミングにおける相互作用情報利用では、酵素阻害剤と非結合化合物のデータベースであるDUD-Eから酵素と化合物の結合情報や力場情報を入手し、化合物が酵素のどの部分に作用するか、化合物がどのような構造ならば酵素の結合部位と適合するか等のルール抽出を行う。 また、異なる酵素に対する結合予測では、結合情報の多い酵素とその阻害剤情報を用いて学習を行う。このとき、酵素の構造と化合物の構造、化合物の物理的化学的性質から、化合物が酵素に強く結合する際のルール抽出を行う。このルールは標的酵素を限定しない一般的なものであり、多くの酵素とその阻害候補化合物に対して適用可能である。 以上の研究により、多くの酵素に対して適用可能な、酵素阻害剤の結合予測を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
モデルの作成と予備実験は終了したが、本格的な実験は来年度にまわし、そのための設備費、謝金、旅費を確保するため。 最終的な実験を実行するための設備費と謝金、及び最終成果報告のため旅費として使用する。
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